ホテルSchaukasten②

朝を迎えた。

 

 

 

私はクイーンサイズのベッドの真ん中に寝かされていた。

 

たっぷりと寝たような気がする。
少し頭は重いが、疲労感はない。
吐き気も消えていた。

 

 

 

 

岩佐くんは…?と辺りを見回すと、テレビの前の二人掛けソファーで、長い手足を縮こまらせて寝ていた。

 

こんな所で寝てくれている。
体、痛くならないかな

 

でも、やっぱり何もなかったんだ。
私はホッとした。

 

 

 

 

6時のアラームで彼が目を覚まし、寝癖のままの頭で

 

『今日、お前外来あるよな』

 

と聞く。

 

『うん、今日はそのまま当直』

 

『オッケー。タクシー呼ぶわ』

 

彼はフロントへ電話し、タクシーを1台呼んでくれるよう依頼した。

 

 

『お前、一旦マンション帰るの?』

 

『まだ時間あるから、一度帰る。
岩佐くんは?』

 

『俺そのまま行くわ。
お前降ろしてから直接病院へ乗ってく』

 

『岩佐くん、ソファーで寝てもらってごめんね。
体痛くない?』

 

『医局ではいつものことじゃん。
あっブラック企業がバレる〜』

 

『うん…』

 

『ベッドの寝心地はどうだった?』

 

と岩佐くんは意地悪そうにふざけた後、

 

『寝れたならいいんだ』

 

と優しく微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

私は、

 

『岩佐くん、昨日は本当にありがとう。
やっぱり私たち、こんなふうに泊まっても、何もなかったね』

 

と言うと、岩佐くんは突然私を抱き寄せて、キスをした。

 

 

 

 

あたたかい唇。
優しい温度…

 

 

 

たくましい腕。広い肩幅。
背が高い彼は、私の身長に合わせて唇を重ねていた。

 

 

 

岩佐くんは唇をそっと離すと、真剣な表情で

 

『何もなくないよ。
今、キスしたよ』

 

と言い、私の目をまっすぐ見た。

 

私はしばらく、されるがままに彼の腕の中に捕らえられていたが、慌てて体を離した。

 

 

 

 

 

岩佐くんが言う。

 

『ただの同期だと思われんの嫌だから。
昨日、俺が言ったこと覚えてる?
女は全部切るから。

どこから何をつつかれても、やましいことが無い状態にしたい』

 

 

私は岩佐くんの顔を見ることができずにいたが、先ほど触れた唇は胸が苦しくなるほどに火照っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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