受胎 ③

“ごめん、妊娠した。”

 

 

突然の私の告白に、司くんは驚きを隠せない様子で言葉を失っていた。

 

 

 

 

 

 

 

しかしやがて穏やかな表情になり、彼は笑顔で言った。

 

『わかった。
結婚しような!!』

 

『えっっ!?
えーーー!?』

 

のけぞるほど驚く私に、司くんがにこにこして聞く。

 

『なんで?☺︎』

 

 

 

 

私は、矢継ぎ早にたずねた。

 

『結婚するの?
産んでもいいの?
そんな簡単に決めていいの?』

 

 

 

すると、司くんはゆっくりとした口調で答えた。

 

『いや、簡単ではないよ。
でも、自然な形だと思うから。
俺はいつかお前と、一緒になれたらいいなと思って付き合ってたよ』

 

『でも、でき婚になるよ?』

 

『俺たちが幸せになるなら、それでもいいじゃん。
お前知らないかもしれないけど、澤口先生もそうだよ?』

 

『そうだったんだ…』

 

 

 

 

 

司くんは、いくらか落ち着きを取り戻した私に聞く。

 

『今は、体調は大丈夫?
つわりは?メシ食えてるの?』

 

『うん、安心したら急に胸焼けがしてきた…』

 

そう言って自分の胸をなでなでする私を、司くんはそっと抱きしめてくれた。

 

『りえ、ごめんな。
お前だって、これからいろんなことやりたい予定もあっただろうにな。
親父さんにも、本当に申し訳ない』

 

彼は私の体と気持ちを気遣い、しばらくそのまま優しく抱きしめて、頭をなでてくれていた。

 

 

 

 

 

『俺、明日にでも実家に報告するから。
お前も親父さんに伝えて、俺ときちんと会わせてほしい。
できるだけ早く』

 

司くんが冷静にそう言ったその横顔を見た時、

 

あれっ?こんな表情する人だったかな
こんなに大人な、引き締まった顔する人だったかな

 

と、これまで見たことのない彼の表情に、私ははっとした。

 

それは30歳の男性が、愛する女性を懐妊させた責任、
そしてその将来を背負うという重責を、彼が覚悟した瞬間かもしれなかった。

 

 

 

 

 

『なんか、安心したらほんとに急に吐き気が…』

 

これ以上話すと吐きそう、という予感がして私は身構える。

 

司くんは私の背中をさすりながら、

 

『dittoでお前のゲロの世話した夜が懐かしいな〜』

 

といつものように私をからかい、しかしその目はすでに父親の、慈悲の眼差しにも見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

0

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です