またまた『1984年の歌謡曲』…本が届いたのだ(中編)

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前回書いたように、僕は、スージー鈴木著『1984年の歌謡曲』を買った。(上の写真は、裏表紙側です。表紙の写真は、こちら

実は、僕は本を新品で買うことが、年に数回くらいしかない。読みたい本があれば、まず図書館へ行き(またはオンラインで予約して)借りて読む。そうでなければ、ネットオークションやブックオフ等で中古を探すのである。

一年のうちに多分、少なくとも100~150冊ほどの本を手にして読んでいると思うのだけれども、9割以上は、上に書いたような入手の仕方なのである。『1984年の歌謡曲』も、はじめは図書館で借りた。でも、そのあと新品で(…中古ではなく)買ったのだ。こうして、真新しいカバーや青い帯が付いた本書を手にするのは、何か清々しい感触がする。新品で本を買うのも、たまには良いものだと思う。

さて、薬師丸ひろ子の「Woman “Wの悲劇”」である。
このサビのメロディが、なかなか凄いことになっているという話だ。前回もこの曲の動画を貼ってみたけれども、それとは別の、これも若い頃の歌唱のものを下にまた貼っておきたいと思う。

「ああ~時の河を~」から始まる部分が、この曲のサビなのだけれども、ここのコードはBbm(Bフラットマイナー)である。その構成音は、シのフラット・レのフラット・ファだ。しかし、メロディの方では、そのいずれかの音階ではなく、その非構成音である「ド」を多く使っている。

そのように書いても分かりにくいかも知れないので、ちょっと別の例で言うと、伴奏ではド・ミ・ソの和音が鳴っているのに、敢えてレの音階でメロディを歌っている様なものだ、という訳なのである。そのように、一聴して少し不思議なことになっている訳だ。
(ちなみに、僕は30年くらい前に、ロック系のある有名ミュージシャンが、何かの話の流れで、「例えばド・ミ・ソが鳴っているときにレで歌い始める人はいませんよね〜」と、ラジオで話しているのを聞いた記憶がある。これはつまり、そのくらいに不思議なことなのだ)

そして、この少々不思議な音階の使い方が、本書によると、この曲の「名曲性の根源」であり、「奇跡」のメロディという訳なのである。僕も、そう思う。率直に言えば、よくもまあこういうメロディを考えついたなあ…という感じなのである。

そこで、普通にこのコードの構成音を使って作ったメロディと、実際にユーミンが作ったメロディとを弾き比べた動画を、著者のスージー鈴木氏が制作してYouTubeに載せているので、ここに貼っておきたいと思う。
本書をお持ちの方は、P.185の楽譜をご覧になって、お聴き下さい。(ちなみに、そのページの楽譜の調号は、フラットがひとつ足りないと思う…。この箇所のキーはAフラットなので、実際にはフラットが4つだと思います)

後者の、ちょっと高くなっている方のメロディが、実際にこの曲で使われたものである。前者のままでは、如何にもサビとしての盛り上がりに欠けるイメージになることにお気づきかと思う。
ここでは、ドの音階が続いているけれども、これはコード(Bフラットマイナー)の構成音ではなく、9度の音階である。敢えてこの高い音階を使うことによって、この曲のサビへ一層の壮大さを与えることに寄与しているのだ。

さて、これとよく似た技法を僕は、先達て紹介した渡邊健一著『音楽の正体』で、実は既に読んだことがあるのだ…。この音階の「正体」とは、一体?

後編に、続く)

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『1984年の歌謡曲』の前作はこちら。山口百恵、ピンクレディー、沢田研二、ゴダイゴ、オフコース、サザンオールスターズ、久保田早紀などなどの楽曲が紹介されています。

スージー鈴木著『1979年の歌謡曲』
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