ピアノの魔女、ヴァレンティーナ・リシッツァ(4)

今回は、前回まで3回に分けてご紹介をしている、ピアノの魔女こと、ヴァレンティーナ・リシッツァの動画集といきたいと思う。宜しくお付き合いくださいませませ…。
(上の写真の出典:https://www.facebook.com/ValentinaLisitsa/

先達ても書いたように、ちょっと売れない(?)ピアニストだったリシッツァは、YouTubeに自分のピアノ演奏をアップするようになる。
そして、そういったデモ演奏動画を見たロンドン交響楽団が、ラフマニノフのピアノ協奏曲全集をリシッツァと一緒に録るようになり、2013年にそれがCD化され、今に至る…という訳である。以降、リシッツァは、数多くのCDやDVDをリリースしているのだ。

さて、下の動画は、リシッツァのアカウントで2009年(…ということは、CDリリースの4年前)にアップされた、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番の第1楽章。
リシッツァのアタマの中で、あたかもオーケストラが鳴り響いているが如く、ピアノをひとり演奏している。前回ご紹介した、同じ曲の、オーケストラとのリハーサル風景の動画と見比べて観るのも一興。ピアノ一台だけを抜き出した演奏とはいえ、かなりの迫力があると思う。

上の曲に留まらず、他にも、「マイナス・オーケストラ」と題したピアノ独奏動画を、リシッツァは数多く作っている。それらの多くが、2009年など、CDデビュー前にアップされたものだ。日本でも、こういった動画を観た人達から「魔女」とか「リッちゃん」とか呼ばれ、知る人ぞ知る人気となっていったようである。


次は、こちらもリシッツァのアカウントでアップされている動画なのだけれども、練習風景を(ストリーミングで)3時間以上も撮ったものだ。これも、貴重な動画である。
民家の一室に置かれたベーゼンドルファーを弾いているところから察するに、この場所はリシッツァの自宅ではなかろうか、と思う。世界的なピアニストが、自宅での練習風景を数時間に渡って撮影して公開するなんて、何とも珍しい…w

この3時間余りの動画の内、初めの2時間くらいは、ノートPCで再生したピアノ協奏曲の演奏に合わせて、リシッツァもピアノを弾いているという様子である。この動画の冒頭に、楽譜を封筒から取り出す場面があるので、ひょっとすると、この曲は初見なのだろうか?(たとえ初見でも、リシッツァにとっては、一応は識っている曲だろうけれども…)それにしても、一見してすぐに弾きこなすという、実に早ワザであるw
なお、この動画のコメント欄に、”How to start learning a new piece : Step 1: Sightread it perfectly Step 2:Done! “(新しい曲をマスターするには、ステップ1:初見で完璧に演奏する、ステップ2:出来あがり!)と書いて面白がっている(?)人がいる。そのくらいに、これはリシッツァの、何とも早いお仕事なのである。


あと、もうひとつご紹介したい。上のふたつとは趣向が異なり、リラックスした場面の動画である。
リシッツァが、なんと街場の手入れが行き届いてなさそうな、飾り物のピアノで、即席の演奏会を行なった、というものだ。場所は、ヨーロッパの何処かのカフェだろうか?店内のお客が自由に行き来しているのが見える。サイケなペイントを施されたアップライトピアノを、リシッツァが45分間に渡って休まずに弾いているのだ。

初めのうちは、指慣らしだろうか、即興のようなフレーズを弾いている。そこから、マイケル・ナイマン、ショパン、リストなど、レパートリーの楽曲を次々と繰り出しているのである。
いかんせん、普段あまり手入れをされていないようなピアノなので、鍵盤の引っ掛かりなどを感じるのだろう。リシッツァは、ピアノ線を叩くハンマーの動きを時折、片方の手で直そうとしながら弾いている。

この動画がアップされたのは、2014年だ(…ちなみに、アップ主はリシッツァではない。撮影者本人かも知れない)。もう世界的に有名となったであろうピアニストが、街の片隅の壊れかけたピアノを弾いているのだ。随分と気さくな人だなあ、と感心してしまう。
演奏後にピアノの席を立ったあとのリシッツァが、動画の最後の方に少し映っているけれども、ヒョコヒョコと照れたように歩く姿が、何とも微笑ましい。リシッツァの、そんな別の魅力を垣間見ることの出来る動画である。

…という訳で、お楽しみ頂けましたでしょうか。今日もすっかり長く(…1700字もw)なってしまいました。読了多謝でございます。では、また。

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今や僕にとって、ピアノといえばリシッツァだけれども、ヴァイオリンといえば、何といっても、この人。ヒラリー・ハーンである。機会をみて、是非レビューしたいと思う。

ヒラリー・ハーン『ポートレート』(DVD)
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