僕は英語が苦手だった…(3)

僕は、大学受験のために、いよいよ勉強に本腰を入れなければならなくなった。
そこで、市内の予備校の受験講座に通うようになったのである。そこで、英語の担当になったのは、K先生という、スラッと紳士然とした、しかしどこか日本人離れした感じのする、60代の元高校教師だったのである。ここまでが、前回のお話。

振り返って見るに、僕はこのK先生から、最も多くのことを学び、いちばんの影響を受けているのかも知れない、と思う。
前々回の冒頭に、「僕は、語学の学習が好きだ」と書いた。精確に言うと、「語学を齧るのが好きだ」なのである。これまでに齧って来たのは、中高以来今に至るまでずっと付き合っている英語と、大学の第二外国語だったフランス語、市民講座で受講したドイツ語、独習した中国語、あと、古典ギリシア語である。

この中で、僕がある程度まともに使えるのは英語であろうか。あとは、中国語が少々。古典ギリシア語は、あるライフワークの研究用ツールである(…この件については、また回を改めて…)。ドイツ語は、勉強してみてなかなか面白かったけれども、フランス語は嫌で嫌で仕方がなかった。そんな感じの外国語ラインアップであるw

(大学受験時に愛用した参考書の一部)

さて、くだんのK先生だけれども、県内のトップ校で長く教鞭をとられたせいかどうか、言語に関する知識が実に豊富だったのである。

授業中には、「この単語の由来はギリシャ語でして…」とか言いながら、ギリシア文字のφ(フィー)やω(オメガ)等を黒板にサラサラっと書くのである。またある時には、「このアクセントの位置にはフランス語の影響があるんですね」と、そこからフランス語の講釈が始まる、という具合であった。英語以外の言語へ縦横無尽に行ったり来たりするのだ。

僕は、このような今までに見たことのないタイプの授業に刮目し、毎回それを楽しみにした。そして、いつの間にか語学が好きになってきていたのである。
以降、一心不乱に英語を勉強するようになったのだけれども、勉強すればする程に、益々英語が好きになっていた。多いときには、1日に15時間くらいは勉強したのではないだろうか。
出来れば、このK先生のような語学的な知識が豊かな人になりたい、と思うようになり、その影響はきっと今でも続いているのだろう、と考えている。だから、僕はあのように何ヶ国語も齧るようになったのかも知れない。

また、K先生を見ていると、語学的な部分だけでなく、文化的な面でも豊かな背景をお持ちなのだろうということが、当時の僕などからも伺い知ることが出来た。K先生は、決して語学だけに留まらない、謂わば教養人だったのだ。そんなところにも惹かれていた。

まあ、そんな訳で、いよいよ入試の出願、という時期になり、僕は幾つかの大学の、文学部英文科や外国語学部英語学科ばかりを受験した。もう、大学に行っても英語の勉強を続けていくしかない、と心に決めたのである。

中学以来、英語の勉強を嫌々やってきた僕は、こうしてK先生の大きな影響があって、大学で英語を専攻するようになったばかりでなく、多言語を齧る語学の徒にまで変貌していったのである。今、小中学生に英語を教えているのも、K先生に憧れて…だったからなのかも知れないのだ。

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上に写真を載せた『英文法講義の実況中継』シリーズは、大学受験当時の僕の英語学習の大きな助けになった参考書のひとつ。発売から多分30年近くになると思うけれども、装丁を替えて今でも発売中。高校の英語が苦手な方には是非オススメしたいです。現在は全2巻。

『山口俊治 英文法講義の実況中継(1) 』
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