高畑勲監督、桜を愛でる映画を最後に創り、桜の咲き散る季節に逝く…

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高畑勲監督が亡くなった。82歳。僕は、午前8時のNHKラジオのニュースで聞いた。今朝4時過ぎに起床した時点では、ネットニュースでこの訃報を見なかったので、その後に発表されたのだろうか。

言わずと知れた世界的なアニメ映画作家である。忌憚なく言えば、芸術性という点では、ライバルと言うべきか相棒(?)と言うべきか…の宮崎駿監督よりも格上だろうと思う。
宮崎監督は、メカやミリタリーなど徹頭徹尾サブカルチャー寄りの人で、それを楽しみながら描いている感じがする。かたや、高畑監督は、自らに内包する美学的な表現を貫こうとするタイプのようだ。

僕は、アニメが割と好きな方だとは思うけれども、マニアという程ではない。唯、好きな作品を好きなように観ているだけである。でも、いま気がついてみると、高畑勲監督作品は殆ど一通り観ているかも知れないと思う。
『太陽の王子 ホルスの大冒険』、『パンダコパンダ』の2作品、『赤毛のアン』などのTVアニメ、『火垂るの墓』、『おもひでぽろぽろ』などなど…。宮沢賢治の『セロ弾きのゴーシュ』をアニメ化した作品もあった。

その中でも、金字塔と呼べる作品は、何と言っても『かぐや姫の物語』だと思う。水墨画のような、水彩画のような画風の絵を、そのまま動かした長編アニメーションである。
僕は、以前どこかで書いたかも知れないけれども、この映画作品をこのまま東京国立博物館に所蔵して永久保存して欲しい、と思っているくらいなのだ。もう、国宝級の美しさと精緻精密さではなかろうか。

結局、この『かぐや姫の物語』が、高畑勲監督にとって生前最後の作品となってしまった。次回作も、この作風を更に昇華させてくれるだろう、と僕は一ファンとして密かに期待をしていた。
しかし、もう一方で、次作はひょっとしてもう無理かな…とも感じていた。『かぐや姫の物語』は前作から10年以上も要したからだ。同じくらいの時間がまだ残されているのだろうか、と正直な気持ちとして考えたのである。

この作品は、晴々とした満開の桜の樹の下で、かぐや姫が手を広げて嬉々とはしゃぐシーンが実に印象的。この映画における白眉とも言える場面だ。ポスターやパッケージによく使われた絵である。
そのような意味において、これは桜を愛でる映画でもあったと思う。そんな作品を残して、桜花が咲き散るこの季節に逝ってしまうなんて、高畑勲監督は最期まで美学を貫いた人だったのだろう。

NHKのラジオでこの訃報を聞き終わると直ぐに、僕は深くどんよりとした気持ちのまま、FMに切り替えた。NHK-FMでは時あたかも、ショパンの『ピアノ協奏曲第1番』が始まったところである。
ツィマーマンが弾く叙情的なピアノの旋律にのせて、オケの弦がときに咽び泣くように鳴る。訃報の後には、この楽想が殊更に切なく感じられる。

高畑勲監督は、楽譜を読み、作曲をするほどに、音楽にも通暁していた。『かぐや姫の物語』では、監督が自ら作詞作曲したわらべうたが使われ、この作品の重要な鍵となっている。
そして、物語のフィナーレには、月から使者たちが賑やかな音楽にのせて、姫を迎えに来るシーンがある。FM放送から流れるピアノ協奏曲を聴きながら、高畑監督もショパンの音楽に見送られ天へ帰ってしまったように、僕には思われたのである…。

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もしかすると、その内に追悼番組として、『かぐや姫の物語』がTV放映されるかも知れません。そのときには、是非ともご覧になってみて下さい。または、Blu-rayで観るのもお薦め。そうでなければ、DVDでも良いです。何にせよ、この映画作品は、日本国民必見であろう、と思うのです…。

『かぐや姫の物語』(DVD)
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