息子と一緒に遥々、2泊3日のお出かけなのだ…(その4)

前回のつづき…。日曜日の午前中は、日の出などの写真を撮り、それから母からの依頼で、レコードプレーヤー等のステレオ一式をセッティングしたのである。

その間にも、息子はお座敷の真ん中に置かれたコタツで、せっせと勉強をしていた。次の日の午前には、大学で入学試験がある。それに備えての、最後の追い込みといったところだ。
僕は、その日の朝、実家から大学までの道を紹介するのを兼ねて、息子を車で大学に連れて行くつもりだ。大学の前で息子を降ろしたら、僕はそのままうちへ帰る。その日の夕方から塾の仕事があるからだ。

そんな訳で、この日曜日の内に、やろうと思っていることをやっておかなければならなかった。先述のステレオのセッティングは、それらの中のひとつだったのだ。
あとまだまだ、他にもやりたいことはある。夜には再び、天体写真を撮影しようと考えていた。それから、行こうとしていた場所が一箇所、あった。空港である。

僕の実家の地域にある空港については、以前の投稿にも書いたことがある。小学生の頃、YS-11がグオングオン…というターボフラップのエンジン音を鳴らしながら、毎日旋回飛行をしていたものだった。
だから、今でも自衛隊の哨戒機などがうちの上空を通過すると、同様のエンジン音にノスタルジーを感じてしまうのである。そんなこともまた、以前書いた。

しかし今はもう、だいぶ昔にこの空港はジェット化され、YS-11も飛んでいない。代わりにやってくるのは、下のようなカラフルなジェット旅客機なのである。FDA(フジドリームエアラインズ)という航空会社だ。

上は、日曜日の午前中、実家の上空を通過した際に撮った。着陸前、高度1000〜2000m程で旋回をしながら降下中なのだろうと思う。こうして1日に数度、FDAのジェット旅客機は決まった時刻に飛んでいるのである。
機種は、エンブラエル175という、ブラジルのメーカー製。うちの方ではまずお目にかかることのない航空会社と機体だ。この鮮やかな色合いがまた良い。是非とも間近で見てみたいと思った…。

午後から、車にニコン P900と三脚を積んで、空港へと繰り出した。小学生のときに、学校の遠足で行って以来なのであるw ジェット化してからは勿論、初めてだ。期待に胸が高まってくる。
空港に到着してみると、無料の駐車場には案外と車が多かった。旅行者がそのまま停め置いているのだろう。地方の小さな空港ゆえ、見学者や出迎え見送りがそれほど多いとも思えなかったのである。

空港の建物の中に入ると、人はまばら。僕は早速、階段を駆け上がり、展望デッキへと急いだ。周囲の山々から吹き降ろされる風が強かった。人の姿は、全く見えない。
やはり、こんな冬の日に寒空の下で飛行機を見ようなどという奇特な(?)人はいないのだろうか…。僕は、バッグからP900を取り出して、首に掛けた。レンズキャップを外す。

滑走路を見渡すと、如何にもガランとしていた。着陸の予定時刻にはまだ30分ほど早かったのである。フライトスケジュールでは、その更に30分後に、離陸が予定されている。
滑走路の隅の方にある格納庫の前には、小型の双発機が置かれていた。徐々に後退して行く。格納されるところだった。更に、その隣では、警察の青いヘリコプターが離陸の準備をしている。

上の写真では、ヘリコプターのメインローターが回転しているのが見て取れると思う。この直後、前方にいた車輌が走り去ったので、ヘリはこの場で飛び立つのだろうと、僕は思ったのである。
しかし、然にあらず。このヘリはタキシング(自分で陸上を移動)しながら、滑走路の真ん中まで進んで行ったのだった。よく考えると、車輪が付いているので地面を走れるのだ。

それから、大きな爆音を立てつつ、華麗に浮遊し前進した。暫くは南の方角に飛んでいたけれども、途中で旋回し、北西を目指したのである。アルプスが聳える方角だ。きっと、山岳で何らかの通報があったのだろう。
僕は、空港に早めについた分、このような光景を見ることが出来て、ちょっと得した気分であった。うちの方でも警察の青いヘリコプターをとてもよく見るけれども、離陸のシーンは初めてだったのである。

さて、そうこうする内に、FDAの旅客機が着陸する時刻が迫る。展望デッキには、人が徐々に増えて来た。搭乗者の出迎えなのだろうか。夫婦や家族で来ている人たちが多いように思われた。

旅客機は普通、向かい風で着陸を行う。この日の風向きを見るに、北の方からやって来て着陸する筈である。…ということは、アルプスを背景に、右から左へと降りて来るのだろう。
これは、シャッターチャンスである。P900のズームで撮れば、この雄大な雪山をバックに旅客機を撮ることが可能だろう、と思った。いっちょ狙ってみよう。益々、期待に胸が高まるw

すると、人々の視線が上空に集中しているのを感じた。旅客機が空港の北側へぐるりと旋回し、その機影が見えて来たようである。僕もそちらを見遣ると、雲ひとつない青空にポツンと一点のようなものが確認できた。
それが徐々に、高度を下げて来る。P900のファインダーでそれを追い掛けた。もう少しで、アルプスの雪の白さと被る。僕は、機体がフレームアウトしないように、慎重にカメラのレンズを向けた。

上は、雪山と重なる間際を撮ったもの。P900は、連写が出来ないも同然の仕様なのでw、こうして自分でタイミングを測りながら(単写で)シャッターを切る必要があるのだ。

更に降りて来たところ。実家に戻ってから、父にこの写真を見せたところ、「飛行機がボヤけておる」と不平(?)を言っていたけれども、こう見えて、実は2000mm相当の光学ズームはほぼ目一杯なのである。
すると、ピント合わせが極めてシビアになる。しかも、被写体はまだ高速度で移動中につき、1秒〜コンマ数秒の間の移動量も大きい。そう簡単にクッキリと写るわけがないのだw 月の撮影とはワケが違うのである。

上の写真は、もうかなり手前まで来て、滑走路に着陸する寸前の場面。ジェットエンジンの向こうで、陽炎が激しく起きているのが写った。このユラユラが結構、お気に入りなのだw

そして、着陸の瞬間。タイヤから白く煙が立ち上っている。僕は、ジェット機のタイヤ(機体から外したもの)を間近で見たり触ったりしたことがあるけれども、本当に大きくて頑丈なのだ。トラックのタイヤとは全く異なっているのである。

着陸後は自走して滑走路を進んで行った。よく見ると、機体にちびまる子ちゃんが描かれている。FDAが静岡県の企業だからなのだろう。

無事、ボーディング・ブリッジ前まで来ました。お疲れ様ですー。この後、ボーディング・ブリッジが搭乗口に接続され、機体の下からは荷物が降ろされた。
この30分後には、次の便の離陸がある筈なのだけれども、その機材が見当たらない…と思っていたら、この機体を使うようなのであった。主翼から燃料を補給していたのである。成る程、終点に着いた列車が、そのまま折り返して使われるようなものなのだろうか。

気がつくと、展望デッキの人々は、半分以上が姿を消していた。やはり、出迎えだったのだろう。でも、入れ替わるようにして別の人々がやって来た。今度は、見送りの一団だ。
僕はまた、暫くここで待っていることにした。この機体の離陸を見届けるのである。それもまた、P900で写真に収めておきたいと思ったのだ。(次回に、つづく)

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