無事この日を迎え、改元となりました。おめでとうございます…

元号が改まり、令和となりました。皆さま、如何お過ごしでしょうか。

昨年の投稿で少しご紹介したことのある、マレーシアのLさんから早速SNSを通じて、お祝いのメッセージを頂戴した。流石、こういったことには実にマメなのである。有難いことだと思う。
それから、僕の方からも、令和の時代においてもマレーシアと日本の関係がより長く一層良いものとなりますように、という旨の返信をしておいた。彼の国に足を運ばなくなって数年が経つ。いつかまた機会を得て訪れてみたいものである…。


さて、前回の投稿で書いた、平成と令和のTシャツを着た記念撮影だけれども、午前零時を待って実行してみたのである。我が家における、実にささやかな内輪のイベントだ。

下が、まず平成Tシャツ。着ているのは息子の方。寝る直前だったので、パジャマの上に重ね着しているのは、ご愛嬌ということで…。ちなみに、去年か一昨年に買って、2000円くらいだったらしい。

それから、令和Tシャツ。娘が着ている。こちらも、息子が先月に買った。1600円だったのだそうだ。平成Tシャツと同じところから買ったのに、値段が異なるし、こちらは何故か横書きである。書体がポップだと感じる。

さて、僕はCDコンポで、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番をかけ始めた。あとほんの数分で午前零時となるのだ。フレンチホルンのイントロが、実に雄壮なファンファーレとなっていた。気分が盛り上がるぞ…。
それから、ラジオのスイッチを入れ、AMでNHKを流した。時報を聞くためである。「ポッ、ポッ、ピーン」という音に合わせて、ふたりがジャンプした。

このタイミングで何故ジャンプなのかというと、嘗て大晦日から元日に変わる瞬間のNHK-Eテレの番組で、こういった企画が以前あったためらしい。つまり、その真似である。
写真では、娘の令和の文字に対して、息子の平成がだいぶブレたので、零時零分の内に、もう2枚撮り直したのだけれども、依然息子の方だけブレてしまう。まあ仕方がないと思って、1枚目に撮影したものを使うことにした。

思うに、元号とは、この四季の変化が豊かな国土における季節の移ろいのようなものなのだろう、と思う。
どの時代が春で夏で…ということなのではなく、一年の中にそのような変わり目を認めるが如く、時代にもそのような節目を求める文化や国民性なのだろうと感じるのだ。

従って、元号そのものが必要かどうかというよりも、むしろ存在することそのものを自然と感じているのかも知れない。例えば、流行りの音楽について考えるとき、「昭和の歌謡曲」とか「平成のJポップ」という具合に、ごく自然に元号が付帯する。
そんな風に、ある物事を考えるときについて回ってくるもの、そのひとつが元号なのだろう。そんな時代の節目のひとつを、我々はいま新たに迎えることが出来た。「令和の…」の後ろには、どんな言葉がこれから付くのだろう。実に、楽しみなことである…。


さてさて、きのうの日中、平成最後として読んだ小説と、買って聴いたCDをそれぞれ、ひとつずつ…。

小説の方は、先達て講演会に行った、高橋弘希氏の『指の骨』。4年前の芥川賞ノミネート、戦争文学である。
作家ご本人は、いつも眠そうな表情(?)の比較的若い人だったけれども、この小説はとにかく描写が綺麗で驚いた。加えて、兵隊の装備品や野戦病院の設備など、当時の細かな用語も実によく調べてあると思う。特に、ラストの数ページの筆致が特に印象的だった。

第二次大戦中の南方戦線が舞台。そこで病気や飢餓とも戦いながら苦しい戦いを展開していた、当時の日本軍の姿を描いた物語である。
僕の亡き父方の祖父も兵隊に行った人だけれども、子供の頃にたまに聞いた戦争当時の話と重ね合わせながら、ときに喰い入るように読むことが出来た。

作中に時折登場する、南国の風景や星空の記述が仔細で美しい。先達ての講演会でも、質疑応答で「高橋先生はとても細かに情景を描きますね」といった発言があった。作家ご本人は「いやあー」と謙遜しておられたけれども。
下に引用したのは、僕が読中に印象深く覚えていたもののひとつ。彼の地の樹木や草木の描写も多いけれども、こういった夜想的な空のワンシーンもよく登場する。主人公が就寝する前、夜空を眺めるのが好きだったからである。

… 夜空を横切る椰子の葉の隣に、月が浮かんでいた。満月だった。その黄色く、平坦な円を眺めていると、しだいに人間の瞳のように見えてきた。黄色い瞳に、私が見下ろされているように感じ始めた。私はその瞳をじっと見つめていた。…

さて、CDの方は、息子が街へ買い物に出かける際、僕がタイトルを指定して買ってきて貰ったものである。
イツァーク・パールマンがバイオリンを弾き、作曲家のジョン・ウィリアムズが指揮をしたという映画音楽集である。以前、パート1の方を図書館で借りて聴いたのだけれども、2は所蔵していなかったのでこの機会に購入することにしたのだ。

パールマンの演奏は、とても上品で柔らかい音がする。バイオリン特有の線の細い超高音ですら、まるでシルクのようにふわりと聴こえてくるようだ。こういった種の音楽には実に適任だと感じる。
平成の最後の一日に、このようなとても印象深い2作に触れることが出来て僥倖であった。令和の時代にも、印象的な本や音楽、映画など多くの作品に是非とも出会っていきたいものである。

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上に書いた、高橋弘希氏のデビュー作『指の骨』は、こちら。講演会では、「時間があったので、小説を書いてみたんですね。そうしたら、こんなのが出来ちゃいましたーみたいな感じで…」と仰っていたけれども、いやいや実に色々とよく調べ考えて書かれている作品だと思います。戦争を描いてはいるけれども、作中で戦闘シーンは多くありません。むしろ、戦場における兵隊の生活が実に濃く描かれています。文体は淡々としつつも起伏があり、これはとても読み応えのある秀作ですね…。

高橋弘希 著『指の骨』(文庫)
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