きくらげの収穫、第一弾を決行。料理して食べてみたのだ…

今日は実に、風が強い。そして、よく晴れ渡っている。いずれも、台風一過としての影響なのだろう。

風は、早朝から吹き荒れていた。辺りを轟々と言いながら、通り抜けるのである。僕は、これを聞くといつも、子供の頃、夜中に似たような音を聞いて不安になっていたのを思い出す。
僕が育った地域は、盆地だった。そのせいか、季節を問わず年がら年中、山脈からの吹き降ろしの大風が、轟音と共に平地を駆け巡るのである。特に、夜が酷かった。

母は時折、洗濯物を取り込むのを忘れてしまうことがあった。いや、ひょっとすると、一晩中干して十分に乾燥させる、という意図があったのかも知れない。魚なども、カラカラになるまで焼く人なのだ。
すると、翌朝になると、洗濯物の幾つかが、風に飛ばされて無くなっている、ということがあった。そのくらい強い風が、夜を通して吹き荒れるのである。

まだその土地に住んで間もなかった頃だったと思う。僕の体操着を入れておくための手提げが、飛ばされてしまったことがあった。母の手作りの、黄色い小さな手提げであった。

僕は密かに、この黄色い手提げが気に入っていた。いや、母が作ってくれた手提げやかばんは、何であれ気に入って使っていたのだ。
図書館の本を入れるための、たすき掛けのかばんなどは、大判の本には今ひとつサイズが合っていなくて使いにくかったのだけれども、それでも無理矢理にでも本を押し込んで、毎日学校へ下げていったものだった。それは、デニム地のかばんだった。

それで、体操着の黄色い手提げだけれども、ある日の朝、母は何も悪びれることなく、「風で飛んで行っちゃったわ」と言った。それを聞いて、僕は大層がっかりした。
お気に入りのものが、風に連れて行かれ、奪われてしまった…。僕は、それが一体どこへどのように飛ばされたのだろう、と朝食を食べている間や、学校へ歩いて行く間、ずっと考えていた。

でも、とうとう分からなかった。飛ばされた黄色い手提げは、それっきりもう見ることはなかったのである。母は、代わりの手提げを用意してくれた。しかし、それがどんな物だったのかは覚えていない。

それ以来、大風が吹く夜にはいつも、黄色い手提げのことを思い出していた。
物干しの下で、小さなからだが、ぱたぱたと上下に翻弄されている。散々振り回された挙句に、洗濯バサミが次々と外れ、それは宙に舞ったのだろう。それから、何処かの畑か林に落ちたのか。

きっと、小さな手提げは、誰に拾われることもなく、そのまま色褪せ朽ちていったのだ。僕の手を離れなければ、もっと長い間大事に使うことが出来たのに、と悔やんだ。

また今夜も、母は洗濯物を取り込み忘れているのだろうか?何かがまた吹き飛ばされるのだろうか?
そして、翌朝あっけらかんと母は、飛ばされちゃった、と言うのだろうか…。風の強い夜にはいつも、そう不安に感じながら、いつの間にか寝入ったものである。


トップの写真は、きくらげの料理。昨晩、遂にきくらげの収穫第一弾を決行した。育て始めてもう、かれこれ1ヶ月くらいになるのだ。(これまでの投稿は、こちら

きくらげは、放っておくと幾らでも大きくなってくれるらしいのだけれども、キリがないので、取り敢えず、大きめのものを2つ選んで採ったのである。
栽培ブロックの左右、文字通り耳のように飛び出していた大きなきくらげを、ザクザクと切り取った。この様子は、何やら、耳なし芳一を思い出さなくもない。栽培ブロックにとっては、そんな立場なのだろうか?

下の写真は、今回収穫したきくらげ。ひとつは、幅が13cmくらいまで育った。これだけ大きく育っても、身が固くなることはない。その点が、野菜や果物などと違うところだろうか。

写真で白っぽく見えるのは、きくらげの表面には細かい産毛のようなものが生えているからだ。新鮮な桃の表面のようになっている。匂いは余りしない。よく嗅ぐと、きのこの香りを若干感じる程度だ。
また、触った感じは、きのこ類と言うよりは、何かゼラチン質のような、またはゼリーの一種のような、そんな感触である。軽く振ると、プルルンと揺れるw

早速、かみさんに、炒め物とスープの具として使って貰った。食べてみると、プリッとしているとも言えるし、コリっとしているとも言える食感だ。味は、市販のものと変わらない、と言うか、きくらげは味そのものがそんなに強くないのだろう、と思う。

息子は、大のきくらげ好きだ。今回のこのおかずでも、きくらげばかり残しておいて、最後に一気に食べて堪能していた。典型的な、「好きなものは後に取っておく」というタイプであるw

下の写真は、定点観測の箇所。大きなきくらげは、もう採ってしまったので、成長途中の中サイズが残っている。もう一方の側も、このくらいの大きさのものが幾つか育っているところだ。

こうして、きくらげは、第二弾の収穫に向けて生育中である。様子を見て、大きくなったら採っていきたい。楽しみである…。

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昨夜観たDVD。図書館で借りた。かの、余りにも有名な映画だ。金田一耕助役は、渥美清。下町言葉を喋らない大人しい寅さん、という感じだったw 原作をだいぶ端折ったストーリーだったようで、観ていて色々と繋がってこない部分があったのが残念。芥川也寸志の音楽が、流麗で絢爛だったのが印象的だった。

横溝正史 原作・野村芳太郎 監督『八つ墓村』(DVD)
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