週末から、うちのねこが寝たきり生活に。目下、19歳と半年。ねこにとって、20歳の壁はこんなにも高く険しいのだろうか…

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トップの写真は、先達て図書館で借りた、坂本龍一キョージュの2枚組CD『The Best of ‘Playing the Orchestra 2014’』である。通常のプラケースではなく、本に似た形の紙製ケースに入っている。

「Playing the Orchestra」とは、キョージュの曲をオーケストラで演奏するというコンサートの名称である。2014年のこのコンサートでは、指揮やピアノをキョージュご自身が務めた。管弦楽は、東京フィルハーモニー交響楽団。
僕は、この『Playing the Orchestra 2014』に関しては、東京公演を収録したDVDを既に所有していて、しばしば愛聴して楽しんでいる。全編に渡って指揮姿を観られるという意味でも、貴重な作品だと思う。

従って、CD版の方はずっと未チェックのままであった。DVDで十分に満足していたからである。しかし、ふと図書館で借りてみて聴くと、DVD版に勝る名演揃いで驚いた。じつは、このCD、東京のみならず、日本各地で行われたツアー公演のベスト盤なのである。
特に、ツアー最終公演となった愛知会場での演奏が秀逸である。曲セレクトも、この公演からのものが約半分だ。比較的ゆっくりじっくりと演奏していて、そのためか、とても聞き応えがある。

加えて、其々の曲自体が持つ、一種の柔らかさと言うべきか、ヒーリング感のような感触が、とても心地良い。聴いていて、心が洗われる思いがするのである。これは、DVD版とは全く別の作品内容だと言っても良い。未聴の方は是非ともチェックの程を…。


さて、先達ての週末、特に日曜日は、大騒動があったので、このようにして音楽を聴いて安らぎを得ていたのだった。騒動とは何か?
9月の末から紙おむつをつけた生活を送っていたうちのねこが、とうとう寝たきりになってしまったのである…。1999年の梅雨の時期、かみさんが掌に乗るくらいの仔猫を拾って以来、約19年半のあいだ飼っているねこなのだ。


(2000年3月に撮影)

その間、病気らしい病気は殆どしたこともなく、動物病院に連れて行ったのは、拾って来た直後の健康診断と、その数ヶ月後の避妊手術、あと最近になって便秘で2〜3度ほど。たったこれだけだったのである。
全くの健康優良児と言っても良いくらいのねこで、人によく懐いて甘えん坊、それに加えて、幼い(若い)頃は遊び好きで、例えばクローゼットの上の段などに飛び乗って昼寝をするという具合にアクティブでもあった。

そんな飛んだり跳ねたりということも、15歳くらいを過ぎてからは全くしなくなり、ここ2〜3年はクローゼットの上に乗ることもしなくなっていた。足腰の筋力が徐々に弱くなっていたためなのだろうと思う。
それでも、家族全員に毎日かわいがられ、うちでは帰宅後に先ずすることといえば、いつもねこを探すことであった。家の中の何処で昼寝をしているのか分からないからである。それで、見つけるや否や、抱き上げて「ただいまー」とやるのだ。


(2014年11月に撮影)

このねこは、取り分け息子が可愛がっている。毎晩就寝するときには、息子が自分の布団に連れて行くのである。多分、10年くらい続けているだろう。今でも、そうしている。
だから、先達ての日曜日、ねこが寝たきりになり始めたときには、息子がいちばんショックを受けたようだ。次の日、熱を出して学校を休んだくらいなのである。

その兆候は、今にして思えば、先週の土曜日の時点で既にあった。土曜日は、キャットフードを目の前においてやっても一口も食べず、日がな一日、座布団の上で香箱座りになって蹲っていたのだった。
ただ、これまでにも、じっとしたまま何も食べないということは、たまにだったけれどもあったので、いつものように翌日になればケロッとしているだろうと、そのときは思ったのである。


(2015年11月に撮影)

ところが、翌日の日曜日になってみると、香箱座りはやめて、座布団の上でずっと横になったままになった。
その晩には、虚ろな目のまま動かなくなったこともあり、僕は「えっ、まさかまさか…」と思ったのだけれども、数分後、ハッとしたように目を開けた。眠っていたらしい。

かみさんは子供の頃から、何匹もねこを飼ってきた経験がある。うちのねこも、もうそろそろなのでは…と、やはり悟ったようで、それから賛美歌をフルートの演奏で聴かせるCDをかけ始めた。以前からうちのねこは、ラジカセの前で音楽を聴いていることがよくあったからである。


(2016年10月に撮影)

そして、月曜日。つまり、きのう。かみさんが近くの犬猫病院にねこを連れて行った。料金がリーズナブルで、獣医さんも評判の良い病院である。便秘になったときにも、いつも連れて行った病院だ。
診断の結果は、老衰の症状が出ている、という内容だった。齢はもう19歳、人間で言えば90か95かと言ったところだろう。そんな高齢なのである。栄養剤を注射して貰って、全部で1600円だったそうだ。

あとは家で、人肌に温めたポカリスエットをたまにこれで飲ませて下さい、と玩具の注射器にも似た器具を持たせてくれた。口の正面から飲ませると誤嚥になるので、横から飲ませるのがコツなのだそうだ。
このブログを振り返ると、ねこの牙が一本、突然のようにして抜けたのが、今年の5月のGWの頃だった。これ以降から、歩くときには少しフラフラとして、足腰に力がないことが多くなったように思う。


(2017年11月に撮影)

これも今にして思えば…になってしまうけれども、きっと老化がこのGW頃から急速に進んで行った、ということなのかも知れない。それでも、そのときまでは病気知らずで元気一杯だったので、毎日おいしい食事と水をちゃんと与えておけば大丈夫、と考えていた。
今夏の酷暑も応えたのだろう。加えて、ここのところだいぶ寒くなって来ているので、きっと更に応えたのだと思う。そのため、日曜日からずっと、湯たんぽを置いて温めているところである。


(2018年11月1日に撮影)

そして、きょう。僕は、早朝の仕事から帰ってきて、夕方に塾の仕事へ行く前に、少々休んでおかなければならないのだけれども、まんじりとして眠ることが出来ない。
すぐ隣には、ねこがやや虚ろな眼を開けて横になっている。僕が時折、真正面に向いて、にゃーんと高い声で鳴き真似をすると、瞳がチラチラと動くのが判る。反応しているのだ。

また、ねこは口をパクパクさせたり、舌をペロッと出そうとすることもある。きっと、僕に鳴き返そうとしているのだろう。こんなときでも、実に可愛いものである…。
僕は、両眼をギュッと瞑って開く動作を何度も行う。これは、ねこが行うアイコンタクトの一種で、「大好き」という意味なのだと何かで読んだ。ねこに通じただろうか?


(きのう撮影)

手元のiPad mini2のフォトアルバムを見ると、様々な写真が2014年の10〜11月から載っている。なるほど、4年前の丁度このくらいの時期にこれを購入して使い始めたのだった。
iPad miniの中のねこの写真も同様に、その4年前の11月から始まっている。4年前、3年前、2年前、1年前…という具合に、10月か11月に撮った写真を選んで拾い集めてみた。

それから、飼い始めた(つまり拾って来た)翌年の春に撮った写真もあった。2000年3月11日と記録されている。これは、オリンパスのデジカメで撮ったのだけれども、iPad miniに移しておいたものの中の一枚だ。それら5枚の写真を上に載せた。
こうして眺めてみると、ずーっと見た目には殆ど変わりがないように思える。本当に、年の取らない(老けない)ねこだったのだなあ…と改めて感じる。

そして、病気も殆ど全くせず、19年間毎日毎日、元気に過ごして来たのに、ここ数ヶ月で急にこんなにも老け込んで痩せ細り、とうとう寝たきりになってしまった…。しかし、これが天命というものなのだろうか。
書籍やネットで、一般的なねこの寿命について調べてみると、大体16〜17歳くらいで老化が始まるようである。そして、大抵は長くとも19歳までには生涯を終え、20歳以上になるねこは余りいないものらしい。

ねこの20歳は、人間で言えば100歳に相当するそうだ。人間でも、100歳は長寿の大きな目標であり、同時に高い壁でもあろう。きっと、ねこにとってのそれは、つまり20歳なのだ。やはりこれは、ねこ界の健康優良児と言えども、大きく高い壁だったのだ…。
しかし、この健気な生命は、宮沢賢治が書いているように、きっと「やさしくあをじろく燃えてゐる」ものなのだ、と信じる。今また、ねこが口をパクパクとさせた。僕は、頷きながら優しくそっと頭を撫でてやった…。

……

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