僕の冬休みは、このお正月三が日をもって、お仕舞いなのだ…

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大晦日からチビチビと呑み続けた獺祭は、最後だけ御燗にした。狸の徳利で半分ほどの量だ。

これまた狸の顔の御猪口で、これを呑む。すると、口に含むやツンとした揮発性の刺戟を孕んだ馥郁とした香りが口腔を突く。常温のときとはまた随分な違いである。
これは結局、好みの問題だと思うけれども、僕はやはり常温の獺祭の方が好きだと感じる。でも、人によって好き好きであろうと思う。しかし、旨いものはどうあっても、旨いのだなあ…。

さて、今年の年末の話をするのは早いのかも知れないけれども、どうせまたあっという間に過ぎ行くのである。
そうなのだ、今年も再び、クリスマスくらいの時期になったら、銀座に寄って行って獺祭を買おう。今回と同じように、僅かな冬休みの間の楽しみのひとつとするのだ。

これがあると、休みの日々がどういう訳か、充実して過ごせるようになる(そんな気がする)。4合瓶の中の獺祭という旨い酒が徐々に減ることによって、日々の経過を意識するからかも知れない。だから、時間を余り無駄にしなくなる。そんな理屈だろうと思った。
つまり、瓶の中の大吟醸酒が僕に示唆するのである。休みだからってあんまり、日々を無駄にするなよ、あとこれくらいしか残っていないんだぞ、って。…そんなところだろう。なるほど。

1600円くらいのものを4日間で呑むので、1日につき400円。これは、実に安いではないか。だから、また買おうw


さて、大晦日の夕方、自転車に乗ってブックオフへ行ったことがあった。取り寄せを頼んであった本を一冊、受けるためだ。期日がその日までだったのである。
レジへ行く前に、ついでにあれも、これもと3冊の本を書棚から選んだ。映画秘宝のムックや、ブラームスの交響曲第4番のミニスコアであった。

でも、店内をよくよく見ると、1月1日から4日までの4日間、本が20%オフのセールを行うというポスターが貼ってあるではないか…。
ざっと計算すると、もう一冊何か買えそうなくらいの値引き額になる。僕は、それらの本をそっと書棚に戻し、当初の目的であった一冊だけを受け取って帰った。

そして、元旦。開店時刻に合わせてまた行ってみた。なあに、正月はどうせ暇なのである。息子や娘も時間を持て余してそれぞれ、友達と約束して出掛けようとしているところであった。
ブックオフの店内に入り、きのうの書棚を早速見ると、あれえ無い無い。まさか、きのうあれから2時間弱の間に売れてしまったか…と思って、右上の方を見遣ると、あった。店の人に棚を整理されて、少し位置が変わっただけだったのだw

あと、同じく映画や音楽、芸能関係の売り場で、寅さんの本も見つけた。読みやすく編集された語録である。

僕は多分、寅さんの全作品をDVDで観たと思っているけれども、今この本は丁度良いと考えた。こんど新作を見ようと思っているところなので、その前のおさらいに打ってつけだ。これも買うことにした。

それから、メキシコ出身の気鋭の映画監督、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの『BABEL』である。最近僕の好きな監督のひとりだけれども、これは未見であった。音楽に坂本龍一が少し関わっていたこともあって、安価なDVDに食指が伸びた。
4冊の本の値引き額で、このDVDの代金が出たようなものだ。これで明後日までのお正月休みは退屈せずに済むだろう。 NHK-FMにも聴きたい番組が、ここ数日のうちに幾つもある。そうやって音楽を聴きながら本を読む。たまに映画のDVDを観る。良いお休みだなw

寅さんの本は、もう、読んでいるだけで寅さんのあの口調がひとつひとつ脳内再生されて、笑みが止まらないw 面白い本だなあ…と感じた。

(ぴあ刊『寅さん語録』)

あと、『BABEL』である。この物語は、如何にも4つの鏡を向かい合わせるようにして、それぞれが反映する像を深く覗きこむような視点で進んでいった。また、それらが反射する光束がいずれひとつの焦点に収束し、新たな煌めきを放つのだろう、と思われたのだ。
しかし、ある程度、伏線を回収した時点で映画は終わる。うーん、もう少しこの先も見たかったなあ、という欲求が僕の中に残った。その点が惜しいと感じられる。でも、とても面白かった。

それにしても、菊地凛子が体当たりの演技という評は何処かで聞いたことがあったけれども、まさかここまでとは。流石、オスカーにノミネートされるだけのことはあるなあ、という感じ。凄い…。

それから、ミニスコアを見ながら、ブラームスの交響曲第4番をブルーノ・ワルター指揮の演奏で聴いた。十数段もの総譜で見ると、なるほどこの音楽はこんな風になっているのか…と感心しつつ、音符を只管に目で追う。
そして、第1楽章の400小節を過ぎたところ。そのクライマックスで木管や弦の音階が駆け上がると共に、僕の身体は痺れを感じてくる。これは、視覚と聴覚の相乗効果によるものだろう。見ながら聴くというのは何とも凄い、素晴らしい。

しかしそれにしても、オーケストラのスコアというのは何故、弦楽のパートがいちばん上に書かれていないのだろうか?実際のステージ上では最前列に配置されているのにも関わらず…。素朴な疑問である。
僕はページを捲る度に、第1ヴァイオリンの動きを見ようとして、咄嗟にいちばん上の段に目を遣ってしまうのだ。しかし、そこにはフルートが書かれている。このスコアに限らず、いつも見間違えてしまうw もう、いい加減に覚えよう、おいら…。


さてさて、きのう。僕の冬休みの最終日である。この日は夕方から映画館に行って、周防正行監督の『カツベン!』を観た。
本当は寅さんの新作を観るつもりだったのだけれども、かみさんと娘の超強力な推薦で、そちらにしたのだ。それは正解であった。でも、寅さんも後日、観に行くつもりである。

僕は多分、周防監督の作品を殆ど全部見ていると思うけれども、『カツベン!』は現時点で、その中の最高傑作になっただろうと感じる(但し、あくまでもオモテの最高傑作として。裏の最高傑作は『それでもボクはやってない』だ)。
でも、この監督は新作を撮る度に傑作を生み出すので、この先も何か別の最高傑作が出来ていくのだろうとは思う。ともあれ、『カツベン!』は本当に面白い映画であった。皆さん、ぜひ見てください。超お薦めですよ…。

さて、周防監督は昔の名画を下敷きにして作品を作ることがある。例えば『舞妓はレディ』は、その名の通り『マイ・フェア・レディ』をベースにしている。それを京都の花街に置き換えたのだ。
かたや、『カツベン!』は、何を下敷きにしているのかというと、『ニュー・シネマ・パラダイス』であろう。言わずと知れた、ジュゼッペ・トルナトーレ監督によるイタリアの名作映画である。

それを大正時代に置き換えている。そこへ、活動写真に活動弁士という、当時の日本独自の映画システムが舞台装置として使われたというわけだ。このイタリアから100年前の日本へという転換もまた、とても面白い。ナイスアイデアだなw
ちょっとネタバレになるけれども、ラストの方は多分、『ラ・ラ・ランド』へのオマージュだろう、とも感じた。でも、こればかりは僕の思い過ごしかも知れないけれども…。

それにしても、『カツベン!』面白いですよ。しつこいようですが、お薦めです。見てくださいね…。
僕は、「この映画から元気を貰いました」なんて月並みなツマンナイ言い方をするつもりは更々ないけれども、観終わってから、明日からの仕事をまた頑張っていこうと思った。帰り道、自転車に乗って、今宵の半月を遥か眺めながら…。それが上の写真なのだ。

上は、『カツベン!』の予告編動画。今これを見ても、笑いがこみ上げて来て仕方がない…。これを見て気に入ったら是非、映画館までゴーですよw

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