冬の陽に光る機関車、その重厚美が醸す宇宙にしばし佇むのだ…

先達て急に亡くなった知人の遺族の方が、我々ひとりひとりに大きなリンゴを置いていって下さった。彼は青森出身だったのである。

別の人から聞くところによると、あの日、アパートの一室で斃れているところを発見された後、部屋の大家さんや職場の上司が彼の緊急連絡先となっている電話番号へ急ぎ架けてみたのだそうだ。
しかし、それは既に使われていない番号だったのだと言う。このままだと親族へ訃報を知らせることが出来なくなってしまう。

そこで、大家さんは電報を打ってみた。すると、それは直ちに転送され、彼の両親まで無事に届けられたのだそうである。
僕は、その話を聞いて、たとえ電話が通じなくなっても、電報はちゃんと届くのだということを初めて知った。こういったときに、実に役に立つ通信手段だと感じる。

さて、電報を読んだ彼の両親は、彼のふたりの妹たちも含め4人で、夜通し高速道路を走り駆けつけたのだそうである。亡骸は連れて帰ることが叶わなかったので、こちらで荼毘に付して行ったのだそうだ。多分、部屋の整理もひと通り済ませたのだろう。

ここまでの話を聞いて、僕は大家さんの対応に痛く感心してしまった。自分の所有する部屋で住人に独り突然死なれてしまったら(たとえ今回のような病死だとしても)あとで色々と面倒や損となることが起こり得るのだろうと想像できる。
しかし、その故人のために機転を利かせて、親族をあっという間に見つけ出した。電報というのがまた、良いではないか。きっと、アパート経営が余程に長い方なのだろう。経験則がものを言ったのかも。黄泉に降った彼もきっと感謝しているだろう。

頂いたリンゴは大きく、手にずしりと重かった。加えて大層、赤い。僕も一応、リンゴでは有名な県の出身だけれども、こんなに立派なものは初めてかも知れない。つい、実家から送られてきた一個と比較してしまった。勿論、トップの写真の左側が彼のリンゴだ。

さて、先日、仏映画『田舎司祭の日記』をDVDで観た。1950年頃の作品である。
ある書籍に載っていた宮崎駿氏と養老孟司氏との対談の中で、宮崎氏がふとこの映画の題名を口にしていたことがあったので、それから気になっていたのだ。あと、ロシアの伝説的な映画監督、タルコフスキーがベストワンに挙げたことがあったとも伝えられている。

この映画を観て、多分それぞれの人がいろいろな感想を持つだろうと思う。
例えば、宗教(ここではカトリック)は斯様にして人心には理解されにくいものなのだ、とか。ひとの為に頑張っても結局、報われないものなのだ、とか。いや、主人公はきっと神に祝福されたのだろう、とか。

この映画から僕は、同じくフランスの文豪、アンドレ・ジッドの『狭き門』を想起した。
その小説もまた、現世では決して報われることのない(と思われる)信仰の物語である。『田舎司祭の日記』の主人公は、『狭き門』のヒロインであるアリサと、頑なな生き方や性格が何処かそっくりだと感じられるのだ。

そういえば、作中でアリサも日記を延々としたためていた。『田舎司祭の日記』は監督のロベール・ブレッソンが自身の信仰を告白した作品であるとも言われているけれども、『狭き門』へのオマージュも多分に含まれているのかも知れない。
丁度、この作品が制作され公開された頃に、ジッドは世を去っている。


上の写真は、先達て、実家の隣市にある音楽ホールのそばで展示されていたSL。あのD51である。
勿論、もう走ることは出来ないけれども、実車輌だ。傍に掲示されていた説明書きを読むと、昭和42年頃までこの県を縦断する路線でずっと走っていたらしい。展示されるようになったのは昭和48年からだそうだ。

彼此もう50年近くも、青空の下にこうして佇んでいる。しかし、そうとは思えないくらいに手入れが行き届いていて綺麗なものである。
僕はSLが実際に走っているところを目の当たりにした世代ではないので、ついつい『銀河鉄道999』の一場面とイメージを重ねてしまった。そのアニメの年代なのだw

それから何といっても、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』だろう。こういった機関車が天を駆け星座間を旅する、なんていう空想を巡らせた賢治は紛うことなき天才だろう。

クラシック音楽史のレクチャーコンサートの前のひととき、僕は陽に青黒く光る機能美が醸す宇宙に、暫し耽ってしまったのであった…。

上の写真は、機関車の運転席を写したもの。石炭を投入する口(あの左右にパカっと開くやつ)や頭上に幾重も渡された配管が見える。SLは文字通り、巨大な走る蒸気ボイラーだということがよく分かるのだ。重厚長大時代の実に豪快なる代物である…。

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先日、電気圧力鍋を置いてある場所が(特に夜は)暗く感じたので、LEDのバーライトを買って取り付けてみました。35cmのタイプで割とコンパクトなのですが、とても明るく重宝しています。下のリンクは、電球色と白色のLEDが交互に埋め込まれていて、ふたつのスイッチでそれぞれを別々にOnOffできます。勿論、両方を点けることも可能。電源ケーブルはUSBの形状をしているため、使用の際にはUSBのACアダプタが別途必要です。

「LED バーライト 35CM USB 5V 給電」
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