米国のアカデミー賞に6部門ノミネートのあの作品を観た。幾つ受賞となるか、けだし見ものなのだ…

最近、小津安二郎監督作品をDVDで幾つか観た。それで、小津安二郎や笠智衆、原節子についての所感をささっと1000〜1500字くらい書いてSNSにアップしたら、何故か消えていたのである。もう色々と使えなさ過ぎのSNSだ…。
このブログのように下書き保存機能があれば良いのに、とよく思う。仕方がないので、それは書き直さずに心の中にしまっておくことにしたのだった…。


さて、先月のことになるけれども、英字新聞で『ノマドランド』という映画が紹介されていた。記事を少し読んで興味を覚えたので、YouTubeで予告編を探して観てみた。
老齢に差し掛かった女性が、不況と夫の死を契機に自宅を引き払い、車で文字通りノマドな(遊牧民のような)生活をする、といった物語らしい。

先達て発表されたアカデミー賞では、作品賞や主演女優賞など幾つもノミネートされていたので、僕はこの映画の名前だけは知っていた。しかし、どんな作品なのかといったようなことには、これまで特に関心はなかった。
でも、予告編を観て、これは実に良い映画だと確信したのである。静謐を帯びた淡い色調の画面に、枯淡たる雰囲気が漂う。そこに、ポストクラシカルな曲調の音楽が、ピアノでそっと寄り添っている。是非とも映画館に行かねば、とも感じた。

調べてみると、音楽はイタリアのあのルドヴィコ・エイナウディであった。そういえば、最近、図書館でCDを借りて聴いたことがあった。
僕は、映画を鑑賞する目的のほぼ半分が音楽を聴くことにあると言ってもいい。益々、観るための理由が出来た。公開日は、数日後であった。行こう、と思った…。

数日経って、塾の仕事へ行く途中、映画館に立ち寄って『ノマドランド』を観た。結論から言うと、大変に素晴らしい作品だったのである。
目下のアカデミー賞には6部門ノミネートしているそうで、上手くいくと5部門は獲れるかも知れない。この6部門のうちの2部門は強力なライバル作と被っているので痛み分けになるかも、という僕の推測である。

比較的ゆったりとしたペースで物語が進行していくロードムービーなのだけれども、北野ブルーのような終始青みがかった画面の緊張感が途切れないので、決して退屈することはない。
ハッとするような大自然の描写のみならず、そのときに周囲から聞こえて来るサラウンドの環境音もまた実に心地よい。特に、森林の中にいるシーンなどは圧巻だろう。

また、哲学性を帯びた文学的もしくは啓蒙的な台詞の数々は叙情をも湛え、上述したスケールの大きな画の構図と相俟って、この作品に対し非常に高い格調を与えている。
数は多くないけれども、要所要所で効果的に奏でられるエイナウディの音楽が、主人公の憂いを伴った心情を代弁して余りある程だ。優美で気品のある楽曲なのである。

ただ惜しむらくは、そのうち主人公に何かが起こるのでは、と観る側に期待(?)をさせつつも、特に何事もなくフッとストーリーが終わってしまうといったところだろうか。
しかし、これはノマドの丸1年間の物語を描いて、その後もこうした旅の生活が果てしなく続くのであった…という意味合いの幕切れなのかも知れない、とも思う。

また、ある場面で、主人公が自分の娘と思しき幼女の古い写真(ポジフィルム)を人知れず覗き込むようにして何枚も見るというシーンがある。そういえば、この娘はどうなったのだろう?とか、見終わった後にも残る謎が少々あるにはある。
『ノマドランド』は、実によく練られた脚本と編集の映画なので、多分カットされたフッテージもまだまだ幾つもあるのだろう。出来れば、いつかディレクターズカット(全長)版でそれらを観てみたいものだ。

さて、上の動画は、本編映像の紹介に加えて、監督や原作者などのインタビューを挿入したもの。

この映画本編の中の英語は、割と標準的で聞き取りやすかったと思う。スラングなどは殆ど出てこないのでは。もしDVDかBlu-rayがリリースされたら、是非とも自室のサラウンドで再生し、日本語字幕なしで堪能してみたいと思っている…。

あと、上は『ノマドランド』で使われた曲を含む、エイナウディの音楽を何と6時間も聴けるという動画。
『Seven Days Walking』というアルバムで、文字通り7日分の楽曲という趣向なのだ。じっと耳を澄ませているだけで、映画における雄大な風景とノマドたちの姿が思い出されてくるようである…。



(出典:「ディアゴスティーニ ・ジャパン」)

さてさて、お話はガラリと変わって、あのディアゴスティーニから、「Gメン’75」のDVDマガジンが発売される、という情報がリリースされた。

いやあ、実に懐かしい。僕は、小学生の頃、土曜日の夜は弟と一緒に居間で「8時だョ!全員集合」を毎週のように見ていた。その前の番組である、「まんが日本昔ばなし」や「クイズダービー」からの流れである。
大抵の場合は「全員集合」が終わると、後ろの方で新聞を読んでいた父が「じゃあ、もう寝ろ」と言うのだけれども、たまに「まだ起きていても良いぞ」と言って、僕たちはそのあとのGメンも見られるということがあったのだ。

そんなときには、ちょっと得をしたような気分になったものである。少しだけ大人の世界を垣間見るような、この刑事ドラマが僕は結構好きだった。
同時期の別の曜日に放送されていた「太陽にほえろ」ともまた雰囲気が違う。あちらは多少コミカルでホームドラマ的だったと思っていたのである。でも、Gメンはとてもシリアスでサスペンス、ときにホラーとも言ってもいいくらいに怖かった。

それから、倉田保昭が大活躍する香港編も楽しみだった。このときには、ヤン・スエというムキムキの敵役が必ず登場して、Gメンたちとカンフー映画さながらに格闘するのだ。
ヤン・スエは倉田氏主演の子供向けアクションドラマ「闘え!ドラゴン」にもよく出演していたものだ。いずれも、また懐かしいものである。

今回のDVDマガジンは、119号まで続くそうなので全部揃えると相当な金額になるだろうと思う。
うーん、あの回とかあの回とか、もう一度見たい話はあるのだけれども、そのときだけかい摘んで買うことにするかな。でも、サブタイトルがうろ覚えなのである。取り敢えず、創刊号は買おう、安いのでw


……

PAGE TOP