闘病記9 脱毛
抗がん剤の副作用として吐き気と共に脱け毛がよく知られる。
投薬中も抵抗力があるうちは毎日お風呂に入ることが出来る。
入院中のわずかな楽しみの一つは、例えシャワーだけでも入浴することだ。
投薬治療中のある日、入浴中にシャワーを浴びていると排水口に脱け毛が溜まっていった。
「とうとう来たな」と思い、髪をゆすぐと更に髪の毛が抜けていく。
知識ではまた生えてくると理解はしていたが、それでもやはり淋しくなる。
その日以降ベッドにも抜毛が目立つようになったので翌日のシャワーで出来る限り髪を洗い落とす。そして枕元にはガムテープを置いて過ごす。
数日してすっかり頭髪は抜け、その後鼻毛、睫毛、眉毛も含め全ての体毛が抜け落ちた。
その喪失感たるや、、、
その後の再発以後は、入院の前に髪を坊主にすることが習慣となった。
また生えてくると思っていたが、さすがにその後4回の再発と治療で今はもう青春時代の見る影もない。
しかし髪は失ったけれど、それ以上に得るものが多かった闘病時代だったと思うことにしている。