闘病記3 暗転
手術後それほど体に負担があった訳ではないので、すぐに職場復帰した。
ある日会議中に見慣れぬ電話番号からの着信があった。胸騒ぎがして、会議後折り返し電話をしてみると主治医からだった。
「手術をして本来は腫瘍マーカーが下がって行くはずなんだけど、手術後入院中に採血した結果のマーカーが上昇している。これは転移している可能性があるので精密検査したい」
初めて診断受けたときは結構余裕だったが、この電話の「転移」の一言には衝撃を受けた。
早速病院に向かい検査を受け、数日後に結果を聴きに行くと、やはり肺に転移していることが判明したと説明を受けた。
転移となると化学療法が必要となってくる。精巣腫瘍における化学療法は治癒率が高いが、その分ハードな治療となってくるので、できれば自宅に戻り家族のサポートを受けて地元の病院で治療を行う方が良い。
そんな説明だった。
単身赴任を始めてから1年半。これから、という時に体調を崩して地元に戻るという選択肢が自分の今後の職業的なキャリアにどう影響するのかも気にはなったが、もちろん命あっての物種である。
会社に申し出て、長崎を引き払い甲子園に戻ることになった。