お呼びでない(2017.3.25掲載予定)原稿〜森友問題を矮小化するな
明日(2017.3.25)の「迂闊屋通信・お呼びでない」に掲載予定の原稿です。
メール発行直前に内容を見直すので、メールでの掲載内容は本文とは若干異なります。
さて、昨日(23日)の籠池理事長証人喚問。
勝谷さんが号外を出したように、かなり衝撃的なものでした。どうも「証人喚問」というと「記憶にありません」が定番となっている印象があり、ウヤムヤのまま終わってしまう印象がありますが、今回は籠池氏が「国会ですべて話す」と言っていたこともあり、期待が膨らんでいました。
私は、どちらかというと政権に厳しい立場で見ていますが、それでもTwitterやFacebookでは右も左も流れてくるようにしています。それらを見ていると、今回の件ですら全く逆の見方があることに驚きます。同じ証人喚問を見ても、籠池擁護と籠池批判とがはっきりと分かれている。
もともと自民党からすると籠池氏は「同志」だったはずですが、今では「敵」となっています。それはなぜか。安倍夫妻に火の粉が降り掛かってきたために、なんとか関係ないことを主張したいからです。これに多くの人が振り回され、以前は「塚本幼稚園の教育方針は素晴らしい」と言っていたであろう人まで、「籠池氏はペテン師だ」「嘘つきだ」と口汚く罵るようになりました。
しかし本来の問題は、国有地がありえない手順と価格でいち事業者に渡されたことです。
その「ありえない」売買に関与したと思われたのが「安倍昭恵名誉校長」だったために、安倍晋三首相の関与も疑われ、実際に許可を出した財務省や近畿財務局に対して何らかの圧力があったのかとか、他の政治家も関与しているのか、との疑いが次から次へと出てきました。
それらの疑惑に対する総理や財務省側の答弁が、動揺を隠しきれない上に不確かなもので、交渉記録も破棄されてしまったために疑惑は拡大。大阪府の私学審の異例な動きとも相まって、問題は連日国会で取り上げられ、一度火のついたマスコミは次から次と新しいネタを探して飛び回っていました。
そこに持ってきて、籠池氏が運営する塚本幼稚園の教育方針や虐待疑惑を問題とする見方もあり、「森友問題」は一種のカオス状態となっていました。
証人喚問については各メディアで詳しく取り上げているので、ここではおさらいしませんが、ポイントはいくつもありました。その最大のものは「総理大臣夫人付」の谷査恵子氏からのFAXでしょう。
【森友学園】籠池氏が安倍昭恵夫人側から受け取ったFAX全文を公表 「財務省に多少の動きを」に自民議員は「疑念」(ハフィントン・ポスト)
このFAXのうち、意図的かどうなのか1枚目しか見ていないメディアも多かったようですが、問題は2枚目にあり、あきらかに口利きを疑わせる内容でした。しかし、これが菅官房長官にかかると「全く問題無い」となってしまいます。
菅氏は「事実関係は、籠池氏の証言と異なる」などとコメント。財務省側の説明として、FAXは籠池氏から昭恵夫人側に問い合わせた内容への回答ではなく、籠池氏側から昭恵夫人秘書に対して10月26日付の陳情書が送られ、その内容に対応したものだったと説明した。
財務省側は回答について、「法令や規約に基づく対応を説明したものであり、何れにせよ国有財産に対する一般的な内容であり、籠池氏から直接問い合わせがあっても、同様の対応をする」と説明したという。
100万円の寄付にしても、籠池氏の証言と昭恵さんがFacebookで回答した内容は180度異なっており、偽証罪が問われる証人喚問で証言したことが、本人が書いたかどうかわからないFacebookの投稿で完全否定され、それが真実であるかのように首相や官房長官が話すという、ある意味「本当に日本は大丈夫だろうか」と思わせるような状況となっています。
当然、昭恵さんや谷氏、松井一郎大阪府知事の証人喚問が必要となりますが、それは自民党が認めないでしょう。「晋三様の奥方を国会に引きずり出すような真似はできない」のかもしれませんし、「本当のことを言われたら困る」のかもしれません。
今までの経緯を見てくると、この「森友問題」はみんな答えがわかっているものの、証拠を出したくてもなかなか出せないために、一向に疑問が解決されないままダラダラと進んでいるように見えます。
つまりこの問題はこういったことなんだろうと思います。
- 籠池氏という、保守ではあるもののかなり偏った思想信条の人物が作った幼稚園には賛同者(特に日本会議)が多く、卒園児のために小学校を作る必要性が増した。
- 賛同者の一人、安倍昭恵夫人を名誉校長にして、「安倍晋三記念小学校」としたかった籠池氏は、そのまま学校建設に動き、行政機関も「忖度」して普通だったらありえないスピードと金額で、建設を後押しした。
- 異例ずくめの学校建設を問題視する地方議員やオンブズマンらによって問題が徐々に広まり、一気に全国的な注目を集めるようになった。
- 慌てた昭恵氏は名誉校長を辞退し、安倍首相は無関係を装ったが、稲田防衛相夫妻の関与や大阪府の「忖度」が問題になってきた。
- 資料は「無い」ことにして、事実関係は籠池氏の主張を完全否定することで沈静化を図ることにした。
- 現在は、田崎史郎、山口敬之といった御用ジャーナリストや御用メディアが、籠池氏に対し「話を盛る人」「嘘つき」「ペテン師」というレッテル貼りを行うことにより、籠池氏の発言すべての信憑性を否定する。
実際に籠池氏は話を盛ったり、確証が持てないことでも自分に有利になると思えば事実のように取り上げる傾向があると思いますが、それでも証人喚問のときには極力真実を述べようとしていたのであろうことは、彼の答弁を見ていてわかります。勝谷さんは「書かれた文章」だからだと言い、私もそれはあると思うけれど、やはり一番は「本当のことを正直に話そう」と覚悟したことによるものでしょう。ごまかすことを考えている人物のことばより、開き直って本当のことを述べようと覚悟した人物のことばの方が真実味があって重いのは当然のことです。
これからどうなるのか。
まだまだ問題は解決されないで残っています。野党は昭恵さんの証人喚問を求めていますが、昭恵さんが黒かグレーだったら自民党は絶対に応じないでしょう。迫田英典国税庁長官の参考人招致は本日(24日)行われていますが、参考人として話を聞くだけなので、現在の佐川宣寿理財局長と同じことになりそう。
大阪は続きそうですが、国会内では与党の引き伸ばしフェイドアウト戦略が勝ってしまうのか、野党の追求が結果を出せるのか。
今週末の世論調査で内閣支持率がどう動くかによって見えて来そうです。先週末に続いて大きく下がれば、まだまだ続くでしょう。しかし、横ばいか上昇に転じると、幕引きに向かいそうです。
ヨロンさんが、御用ジャーナリストなどと言うとは。もう少し言葉に気を使う人と思ってました。単なる中傷ですよ。