オリンピック選手のメンタルの強さと、進歩のないメディア報道の弱さ
オリンピック選手のコメントがいちいち素晴らしい。
オリンピックのスピードスケートでは、長野オリンピックの清水宏保選手や岡崎朋美選手の活躍が記憶に残っているが、サラエボオリンピックでの黒岩彰選手や長野オリンピックでの堀井学選手の辛そうな表情が今でも蘇ってくる。メダル獲得のプレッシャーを押し付けられて、その重圧に苦しんだ。
以前の夏のオリンピックで、誰だったか「楽しみたい」と言って叩かれていた。確か女子選手だったと思う。彼女はそれまでの激しいメダルへのプレッシャーを和らげるために言ったのであろうことは容易に想像できるのだが、その後「税金を使ってオリンピックに出させてもらっているのに、『楽しみたい』とは何事だ」という批判が沸いた。今で言う「炎上」である。
その時は、「何をバカなこといっているのか」と思っていた。税金云々言うのであれば、他に税金をもらって仕事していない政治家や公務員などが山ほどいるのに、そこは批判せずにニュースになった女子選手を叩く。別に選手は本心ではないんだよ。本心だったとしても、それは「メダル獲得を目指す」「ベストの戦いをする」上での「楽しみたい」であり、誰も遊びに行くとは思っていない。なんでそんなことわからないのか。
ところが、今行われている平昌オリンピックで「日本はメダルラッシュが期待される」と報道されて、記者から執拗にメダルの可能性を問われても、選手は「メダルを目指すのはもちろんとして、楽しめたら良いと思います」という内容のことを淡々と語っている。圧倒的な実力に裏付けされている女子スピードスケート選手がコメントしても、「税金が投入されているんだから『楽しみたい』などと言うな」という批判があるとは聞こえてこない。
これは、大舞台で動じないくらいのメンタルの強さを選手が持っていることからも、言えるのだと思う。特に最近の選手はメンタル面が強くなったように思える。夏季オリンピックの水泳や陸上、冬季オリンピックのスケート、フィギアやジャンプなど。
若干ハタチ前後のアスリートが、世界的大舞台の一発勝負で結果を期待され、それを残すのは並大抵のメンタルではダメだろう。
それなのに、相も変わらずテレビではメダル数の皮算用をしている。それが一体何になる?視聴率につながるから?
選手は進化しているのに、全く変わらないメディアを見ると、「日本をダメにしているのはこいつらなのかなあ」と暗澹たる気持ちになる。