恐らく日本一有名な経営者であろう、ソフトバンク創業者であり社長の孫正義氏。
「彼は一体何者なのか?」というシンプルだけど超難問に、日経記者が挑んだノンフィクション。
557ページもある大作だけど、抜群に面白い。
テーマになっている「孫正義」という存在自体が超人的で目茶苦茶面白いんだけど、適度な距離を保ちつつ、徹底的な取材で掘り起こした事実の数々がさらにノンフィクションとしての質を一層高めている。
孫氏だけでなく、彼の志に共感し、彼のために全精力を費やして数々の修羅場を切り抜けてきた人たちにもスポットを当てているのが、本書の大きな特徴だ。
「孫正義」という物語」は、孫を主人公としつつ、彼を支える数々の強者たちが織りなす群像劇なのだと、私は思う。
著者のこの言葉に尽きる。
個人的には、昔ソフトバンクの取材を担当していて、振り回され続けた苦い記憶があるし、ADSLやら携帯電話やら新規参入時には大混乱を起こして消費者にえらく迷惑を掛けているので、ソフトバンクを手放しで賛美するつもりはない。しかし、孫正義と同志たちが起こしてきたさまざまな「革命」はやはり功績として適切に評価されるべきだろう。
次はアームを買収してIoTに。どこへ向かうのか、孫王国は?
本書に1つだけ不満があるとすれば、「孫正義の後継者は誰になるのか?」に関する言及が弱い点。まあ、肝心の本人はまだまだ全力疾走しているし、その答え自体がいまだ存在していないのかもしれない。
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