今期叡王戦の藤井聡太二冠は永瀬王座、丸山九段、斎藤八段に勝って豊島将之叡王への挑戦権を獲得した。ブログには載せ損ねたが、永瀬王座などは途中持ち時間に大差をつけ、形勢も優勢であったのに、みるみる追いつかれ負けてしまった。藤井二冠は今期棋聖戦の第2局のような勝ち方を最近は何度も何度もみせつけて、もはや開いた口が塞がらない強さである。
一行レビューっぽくなるが、簡単に振り返り。
2021-05-31 叡王戦 永瀬拓矢 王座 vs. 藤井聡太 王位・棋聖 第6期叡王戦本戦
今期猛烈にエキサイトした対局。永瀬王座の渾身の研究をひねりつぶした米国海軍級の藤井二冠の対応力。序盤から完全に研究ハメ、チェスクロックでの戦いも味方にした時間攻めまで徹底して今日こそ永瀬か、と思わせたのに勝ち切れなかった。藤井二冠の脅威の粘り、劣勢時のイヤミの付け方がうますぎる、打ち歩詰め回避の7四桂がスタイリッシュ。互いに1分将棋になると勝ち切るのはまず無理。ここまでAI最善手を指し続けられるのは化け物でしかない。
2021-06-22 叡王戦 藤井聡太 王位・棋聖 vs. 丸山忠久 九段 第6期叡王戦本戦
藤井二冠の圧勝。一度完璧に指されて負けた丸山九段の伝家の宝刀一手損角換わりをあえて受けて打ち破った。角換わりの対応を淡々と見せつけた一局。
2021-06-26 叡王戦 斎藤慎太郎八段 vs. 藤井聡太 王位・棋聖 第6期叡王戦本戦
さいたろうが名人戦でこんな将棋を指してくれればもっと盛り上がっただろうに、と思わせた一局。角換わりを堂々と受けて立った藤井二冠の途方もないデカさ。さすがA級優勝と思わせたさいたろうだが、先に持ち時間を使い果たしたのが無念。藤井二冠玉ががっちり囲って、さいたろう玉がゆるゆると浮遊する、ある意味対局者が逆のように見えた不思議な序中盤。77手目桂に取られそうな銀を自然に引いたのが疑問手、名人戦でも金を引いて負けた局があった。さいたろうは引く手に要注意!
※※※
さて、この結果、豊島叡王は最も恐ろしい挑戦者を迎え撃つことになった。王位戦と併せて最大12番勝負である。ついでに竜王戦の挑戦にも近いのでさらに19番勝負になる可能性もある。藤井二冠の抜群の対応力を考えると大して参考にならないが、先手番なら角換わり、後手番なら横歩取りが勝算を見込めると思う。矢倉、相掛かり、振り飛車、力戦は今の段階でも攻略は難しいだろう。
藤井二冠は序中盤で持ち時間を大量に消費する傾向があるので、終盤入口までに圧倒的な持ち時間の差をつけておくことは必須。6勝1敗と対戦成績は圧しているがこれとて1分将棋で間違えてくれた対局があることを忘れてはならない。あとは藤井二冠に負けないイヤミを付けつつ盤面を混沌とさせる善悪を超越した手で読みを外し、精密機械の破壊に徹する。見かけによらない豊島竜王の野性味が発揮できれば王位戦と併せて最高のシリーズが期待できそうだ。
一時期ではあるが藤井二冠は、棋聖戦、王位戦、叡王戦と3つのタイトルマッチを同時に戦う。付随する対局以外の負荷も大きい。豊島竜王、決して不利ならず、と予想しておく。
⇒藤井二冠が超異例の3タイトル戦同時進行も 豊島将之叡王への挑戦権獲得
⇒藤井二冠 三冠挑戦でタイトル戦ラッシュ 叡王戦五番勝負進出決定 7月は最多8局