再読:天使の傷痕 (講談社文庫) 新書 – 1976/5 西村 京太郎 (著)

ひとつ注意事項、「天使の傷痕」は改題されているので、江戸川乱歩賞の一覧を探しても見つからない場合があるかもしれない。第11回(1965年度)の「事件の核心」というのが元の題である。このタイトルじゃ全く売れないよね、きっと(苦笑)傷痕は「きずあと」ではなく「しょうこん」と読む。変換で出てくるのは商魂であるが、改題は正解だったと思う。

今日は一日中雨で、歯医者に行った以外はほとんど自室にいた。最初に読んだのは文庫になってからで千葉市の中学校に通っていた頃である。こんな超多作の人気(トラベルミステリー)作家になるとは当時は知らなかった。30代前期からの作家活動にもかかわらず、著作の9割以上は50歳を過ぎてから(1981年以降)刊行されたもので、作家としては大器晩成型である。私もまだまだいける!?

偏屈な小谷野氏が第一に推すくらいだから、詳細は忘れていたが、真相の奥深さだけは印象に残っていた。さて、再読の結果は、最近多い引き伸ばしただけの超長編とはうって変わり実にテンポがいい。これ、作り手にもよるけど、映画にしたら名作になっちゃうよ。黒澤明の「天国と地獄」だってマクベインの「キングの身代金」なくらいだから。(といって「キングの身代金」が駄作だというつもりは全くなくて、身代金の受け渡しから失速しただけの普通の小説。「天国と地獄」は、アイデアをもらって途方もない傑作にしたてあげた黒澤明がすごいだけ)

張った伏線は当然のことながら全て回収されているし、最後に残った重たい課題は誰にでもずっしり来るに違いない。満足度 星4.5(5点満点)。

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