形勢は大きく豊島将之竜王・名人に傾いていたとはいえ、88手・19時38分での投了はあまりにも早すぎた気がする。竜王・名人のほうが残り時間は1時間程度少なく、人間同士の対局では秒読みになれば何かが起こる可能性が高い。三冠の真骨頂である細い攻めをつないで最後までもつれさせて欲しかった。
これで今年度の対戦成績はまたしても竜王・名人が一歩リード
06/19 〇渡辺―豊島× 棋聖戦第2局
06/25 ×渡辺ー豊島〇 王座戦準々決勝
06/29 〇渡辺―豊島× 棋聖戦第3局
07/09 〇渡辺―豊島× 棋聖戦第4局
08/02 ×渡辺―豊島〇 竜王戦準決勝T
08/16 ×渡辺―豊島〇 銀河戦決勝
02/06 〇渡辺―豊島× 叡王挑決第1局
02/13 ×渡辺―豊島〇 叡王挑決第2局
豊島5-4渡辺
竜王・名人の54手目△7二角打ちがやはり素晴らしかったと思う。お得意の豊島レーザーが、研究外しを狙った三冠の▲1八香をもろに直撃した形である。さて、ここから重要な予想を記す。
渡辺明三冠の呆気にとられるほどの早期の投了は、本人は否定するかもしれないが、明らかに今後の対局への知力・体力を温存するためであろう。明日以降の渡辺明三冠の予定である。
第45期棋王戦 5番勝負 第2局 前夜祭
2020/02/16(日) 9:00~
第45期棋王戦 5番勝負 第2局 対本田奎五段
場所:栃木県宇都宮市「宇都宮グランドホテル」
2020/02/19(水)
第69期大阪王将杯王将戦 7番勝負 第4局 前夜祭
2020/02/20(木),21(金) 9:00~
第69期大阪王将杯王将戦 7番勝負 第4局 対広瀬章人八段
場所:神奈川県足柄下郡箱根町「ホテル花月園」
2020/02/24(月) 15:00~
第5期叡王戦挑戦者決定3番勝負 第3局 対豊島竜王・名人
2020/02/27(木) 9:00~
第78期順位戦 A級 最終戦 対三浦弘行九段
場所:静岡県静岡市葵区「浮月楼」
むろん東京以外では半日単位の移動時間も必要になる。殺人的な日程なのである。(ちなみに羽生善治九段はこんな生活を平成の間中続けていた)加えて叡王戦は挑戦者になったところで相手は「負けない将棋」の永瀬二冠である。容易に勝ち切れる相手ではない。同時期の名人戦への影響は必至だ。
ということで、将棋の渡辺くんとて魔王ならぬ人間、力を温存しておこうという意識がはたらいてもおかしくはない。だがまて、そんなどこかで力を加減するような将棋をしていて、大事な名人戦で勝ち切ることはできるだろうか。
今日の将棋は竜王・名人の序盤研究のスキのなさから苦し紛れの変化球を投げ込んで咎められた。鮮やかな作戦負けである。竜王・名人側が、もしかしたら「いける」という自信を得てしてしまったかもしれない。はっきり力量の差がない場合にはこの「相手をのんでかかる」ことは重要なのだと思う。
この分では三冠キープだってまだまだわからないよ。