人生で初めて町内の役員というのを任され、
毎週末になると手さぐりをする日々。
先日、某委員会で会計をお願いしたいと言われた。
会計。これだけはお断りだ。
会計と借金の保証人だけはならならない。
天地がひっくり返ろうと、絶対に。
「そんなこと言わないで、頼みますわー」
からめ手でお願いしてくるのは知り合いの区長。
同じ町内なので、無下に断れないのが辛い。
「いや、でも会計だけは本当に苦手なんです」
嘘ではない。
「数字を見るとジンマシンが出るのでおじゃる。
カンちゃん、わしゃかなわんよ」でおなじみ
ハクション大魔王もかくやと思われるレベルで
数値管理が苦手なのだから仕方ない。
「まあまあ。苦手なんて言わずに。
会計なんて誰だってできるもんだよ」
「申し訳ありませんが、私はできません」
そんな不毛なラリーが続いた後、区長が言う。
「そんなら、どうしたら引き受けてもらえる?」
引き受ける条件を出すように求めてきた。
さすが、百戦錬磨の区長の攻撃には無駄がない。
「そうですねえ。たとえば、ここにいる委員全員が
オンライン上で共有できるシートを私が作るので
みんなでそこに書き込んでいただければ……」
「あ、そういう話になるともう分からん。
ワシら年寄りはそういうの苦手だもん」
ああっ! 苦手だと逃げられた。
苦手と言うなと言ったのは誰だ。
「まあ、次回までに考えといてね」
不毛なラリーは次回も続く予定。