若武者らしく大事にいこうという気が全くない藤井聡太七段の強気の攻めと受けが、流石の永世竜王・永世棋王の渡辺明に咎められた、という本局である。昼食休憩の時点で76手まで進み、午前中に盤面は終盤戦に突入というスピーディな展開。両者研究が過ぎるぞ。藤井聡太七段はタイトル戦初の黒星。私の注目は2点。
➀△9九角成(82手目)に対する▲7七桂が渡辺棋聖の攻めを引き込む強気な指し回しで胆力ありまくりの驚愕の一手。攻めてこられるのは覚悟の上、受けつぶせると考えたのか。このような手が出てくるところが藤井聡太の魅力のひとつだ。
➁△9九飛(90手目)に対する▲9八銀に1時間20分以上の大長考。ここはいくらでも読みたいところで、こんなに読むからには詰みがあったか、とまで感じたがそうではなかったようだ。ここで持ち時間に差をつけられたところが最終盤で渡辺明に利した。豊島竜王・名人は同様のことで渡辺明に黒星を喫して、このタイムマネージメントを修正してきた。愛知県人として藤井聡太も続いてほしい。
さて、ここで指した▲9八銀について、またしてもたややん氏が興味深いツイートをしている。無断で引用したのでご興味のある方はお読みください。
棋聖戦第3局、藤井七段の指した91手目9八銀について、水匠は後から振り返って考えると、8七玉の方が良かったかも(9八銀は疑問手かも?)などと言っていますが、水匠も15億手読んだ段階までは9八銀推しだったじゃないですか・・・。
8七玉の方が良いと言い始めたのは47億手読んだ後でした。 pic.twitter.com/gyfqe4gqgH— たややん@水匠(COM将棋) (@tayayan_ts) July 9, 2020