7BookCoverChallenge -Day7

02 日記
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たまたま知った、この「7BookCoverChallenge」という〈遊び〉も、今日で終わり。
最後の本には、これを選んだ。これが昨夜4/28の読書会で選んだテキストです。ベタかもしれないが、この〈遊び〉には〈同時代性〉を残したいという意図があった。

【著者】アルベール・カミュ著/宮崎嶺雄訳
【書名】ペスト
【出版】新潮文庫
【発行年】1969年

このコロナ禍で再び脚光を浴びることになったこの本。一時は品切れもつづいて、新潮文庫は15万部を増刷したという。このコロナ禍でなければ、正直これほど一気には注目されなかったろう。

北アフリカのオランという街を舞台にした群像劇は、医者のリウーを中心に展開される。ある日、ネズミがポツポツと死に始める。そこに端を発して、ペストがじわりと忍び寄ってくる。死者の数が増えてもなかなか「ペスト流行」だとは認めない行政側を尻目に、疫病は街を侵していく。
ストーリィは、流行期、停滞期、回復期という3つのステージに分かれて展開し、それぞれに事件があり、人々の対立と葛藤と相互理解がある。

読書会では「これは〈預言の書〉といってもいいくらいに、いまのわたしたちの置かれている状況が書かれている」という発言もあったが、都市封鎖、行政側の初動の遅さ、増えつづける死者たち・・・そのいずれもがいまぼくたちが経験している(してきた)ことそのものなのである。

書かれている文章は訳の古さやカミュ独特のアフォリズム的な言い回しもあって、正直読みづらい。たくさん売れているけれど、はたしてどれだけの人が読み終えられるだろう。しかし、抽象的な言葉だからこそ、それゆえに具象の世界に生きているぼくたちには、本質的な言葉として受け止められうる。

はたしてこのオランという街は、無事〈回復〉したのだろうか。なにを以て〈回復〉と言い切れるのだろうか。それは、いまのぼくたちにも言えることだ。

最後に、語り手はリウーに対してこう語る。

彼がかちえたところは、ただ、ペストを知ったこと、そしてそれを思い出すということ、友情を知ったこと、そしてそれを思い出すということ、愛情を知り、そしていつの日かそれを思い出すことになるということである。ペストと生とのかけにおいて、およそ人間がかちうることのできたものは、それは知識と記憶であった。おそらくはこれが、勝負に勝つとタルーの呼んでいたところのものなのだ!

知識を得、そして記憶すること。
ポスト・コロナのヒントのひとつがここにあると思う。

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