今日は、日曜日なので、早朝の仕事はない。
よって、午前中は(昨日もそうだったのだけれども)、ややのんびりと過ごしている。忙中の閑だ。
やはり、CDでグレン・グールドを聴いている。遠くで鳴く賑やかな蝉の声と、グールドの怜悧なピアノの音が程よく溶け合う。きっと両者は、干渉し合わない音同士なのだろう。これも、夏の終わりの一コマである。
僕は、TVを観ない。ゼロではないけれども、極力避ける。今、何処ぞの局の、似非(?…と一応w)チャリティー番組が放送されているようだ。昨夜、仕事場の塾でも、中1の女子生徒同士が少しだけそんな話をしていた。ランナーがどうとか、と。
僕は、以前一度だけ、中2の生徒たちに、TVばかり観ていたら、偏差値が40になっちゃうかも知れないよ、と言ったことがある。まあ、TVを見過ぎないように、という牽制である。
ちなみに、うちの塾の中学生たちは、全県模試の偏差値で、全体の平均値が64~65である。上は当然、75を軽く超えている生徒も何人かいる。(70以上の生徒は、全体の3分の1くらい)
逆に、50に届かない生徒は、ほとんど全くいない。偏差値60を切っていれば、「出来ない生徒だな」という認識になる。だから、「40になっちゃうよ」は、かなりコワイ言葉なのだ。
それで、TVを観ると偏差値40になる、の話だけれども、これは、某大手広告代理店のおエライさんが、実際に言っていたとされる言葉である。「TV番組は、偏差値40のアタマの人たちに合わせて作ってある」と。
この言葉は、僕が生徒たちに言ったように、「TVを観ると偏差値40になるよ」とも受け取れるし、多少好意的に解釈すれば、偏差値40の水準で番組を作っておけば、母集団のほぼ全体(それでも85%くらい)をカバー出来る内容になる、という意味だとも理解され得る。正規分布では、大体そうなっているからだ。
まあ、教師というものは、時には演技者、という立場でもあるのでw、ある程度は都合よく生徒を誘導するために、僕は上のふたつの内、前者の解釈を利用したのである。
他に、元NHK局員で経済評論家のI氏も、「TV番組というものは、国民の大多数の理解程度に合わせて作らなければならないことを、NHK在職中に知った。そして、その大多数とは、恐ろしいくらいに知能が低いのだ」みたいなこと(…一部意訳かも…)を書いておられたことがある。先述の、広告代理店のおエライさんの発言と内容や趣旨が一致しているように、僕には感じられてならないが、どうだろうか。
さて、ここからが今日の本題…w
もうすっかり、一時の猛烈な暑さはすっかりと和らぎ、あとは気温30度付近を行ったり来たりしながら、徐々に下降線をたどるのだろう、と期待をしている。毎年そんな日に、僕が観ている映画である。
『鉄塔武蔵野線』という。上とトップの写真が、それ。(前置きが長くなり、トップの写真が遠くなってしまった。申し訳ないです…)
これは、元々小説であった。銀林みのるさんが書いて、第6回日本ファンタジーノベル大賞を受賞したのである。ちなみに、この賞の第1回受賞者は、鈴木光司氏だ。
小説の方は、上のように、物語を進行させながら、余白に鉄塔の写真が多数掲載されている、というちょっと珍しいスタイルになっている。なお、この『鉄塔武蔵野線』とは、東京都内から埼玉県内や千葉県内を走るJR武蔵野線とは関係ない。鉄塔間ををつなぐ送電線の名称である。
映画は、ちょうど20年前、1997年に公開された。主演は、伊藤淳史さんだ。まさしく「チビノリダー」が小学生になった、というくらいの歳の頃に見える。
この伊藤淳史さん演じる小学6年生のミハルが、小学校の夏休み最後の思い出に、友達のアキラと一緒に自転車の旅をする、という話である。今思いついたけれども、米国の映画『スタンド・バイ・ミー』に話の内容がやや近いかも知れない。
ただし、『鉄塔武蔵野線』では、旅の目的は、鉄塔探しである。鉄塔に付いている番号を辿り、1号まで突き止める、という冒険だ。
途中、友人のアキラが帰ってしまう、自転車を乗り捨てて徒歩になる、などのアクシデントが多数起きる。それでも、ミハルは前進するのである。
これがなんとも、いじらしくも思えてくる。もう、目が離せない。セル版DVDには、鑑賞のお供に、マップが付いている。
この長い旅程を、小学生がほぼ一人で踏破するのだ。さて、最後はどうなるのだろう…?何とも、余韻の残る映画なのである。だから、次の夏の終わりにも、また観てしまう…。
今年も、夏期講習の全日程と、その後の後片付けなどなどが全て終わって、やっとこさお休みがゆっくりと取れた暁には、またこのDVDをじっくりと観ようと思う。これで、僕の忙しくも、暑くて長い長い夏(特に8月)は、漸く終わりを告げるのである。
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エンディングに流れる、おおたか静流さんの主題歌も、実に良い味出しています。例えるならば、日曜日の晩に流れる、サザエさんのエンディング曲のような風情と言えばいいでしょうか。ちょっとだけ、名残惜しくもあるような…。
『鉄塔武蔵野線』(DVD)
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