VUメーターの製作記、5回目。(前回は、こちら)
前回は、プリント基板にICやトランジスタなど、電子部品をハンダ付けしたことを書いた。この回路は、謂わば一種のアンプである。音声の電気信号でメーターを動かすため、その信号を増幅するのだ。
VUメーターというものには、本来は規格がある。このくらいの大きさの信号のときには、針がメーターのどこを振れるようにする、というのが決められているのだ。そうでなければ、スタジオでは意味をなさないだろう。
しかし、家庭内などで使われる、ホビー用のVUメーターには、その縛りは余りなく、調節用のツマミが付いている。それで、様々なプレーヤーや音源の信号の強弱に応じて、好きな振れ具合に合わせることが出来る。
つまり、見た目重視なのだw 例えば、CD等で旧い録音のものは、比較的小音量であることが多い。そのままでは針の振れが小さくて詰まらないので、ツマミをぐっと右に回す。すると、大きく振れるようになる。
そんな調節を可能にするアンプが、前回ハンダ付けを行なった回路の主な目的である。あと残っている作業としては、この基板からメーターや端子などに、それぞれ配線を行う。全部で15本くらいだろうか。
線の材料は、色や太さに応じて、全部で4種類が付属している。それを、組立説明書の指示通りの長さに切り、被覆を剥いて、中の線を露出させる。それからハンダ付けである。これをひたすら繰り返すのだ。
まあ、基板さえ完成させてしまえば、配線なんて簡単だよ…と僕は考えながら作業を始めた。もう、小学生当時に組み立てたタミヤの自動車模型の頃から、モーターや電池ボックスなど配線は慣れている。
ニッパーで線材を切り、カッターで被覆を剥く。中の線を指先で捩る。あとは、取り付け位置を間違えないよう、よく確認をしながらハンダを付ける。はじめの何本かは、スイスイと進んだ。
しかーし、5本10本と進んでいくうちに、プリント基板の小ささがこたえるようになってきたのだ。基板裏の、ハンダを盛ることが出来るスペース(パターンという)が案外と狭い…。
下手をすると、隣のパターンにハンダが流れてしまうのだ。明らかに、ハンダを盛り過ぎなのである。でも、ごく少量を上手く盛ることが難しい…。
やはり、電子部品をハンダ付けするときに感じたのと同様、昔よりも遥かに細かく小さくなっていることに、僕は順応できていないようだ。視力の衰え(?)も幾分関係しているだろうか…。
もし隣のパターンにハンダが流れてしまうと、電流がショートする原因となるので、そこは余計なハンダを丁寧に剥がしておかなければならない。そんな訳で、配線も意外と手こずってしまった。
加えて、組立説明書は、配線修了後にプリント基板を裏返し(つまり、ハンダ付けした面を上)にしてケースにネジ留めすることを前提に、配線の長さを記載しているようだ。このことは、全ての作業終了後に気付いた。
一方で、僕は裏返しではなく、電子部品が上から見えるようにプリント基板をネジ留めしたいと考えていたのである。見た目の豊かな方を上に向けておくのは、自然のことに思われたからだ。
上の写真は、配線の終えたところ。プリント基板は、まだ裏返しの状態である。組立説明書に従うならば、この状態でケースにネジ留めすることになる。しかし、僕はこれを反対返しにしようとする…。
すると、な、何と、いちばん左側の赤い線の長さが微妙に足りないのである。あと2~3cmほど長さが欲しいところだ。上の写真では、その赤い線が、パッツンパッツンになってしまっていることが見て取れるだろう、と思う。
僕は、そこを何とか引っ張って、基板をネジ留めしてしまったw 但し、ネジをきつく締めると線が外れてしまいかねないので、手加減して多少緩く締めたのだ。まあ、基板がある程度固定されれば、それで良いのだ。
上の写真は、ハンダ付けの際に切った電子部品の足や線材の被覆。これだけの量をハンダ付けして、配線したのである…。その下に置いてあるのは、余った線材だ。
しかし、こんなにも沢山の線材が余るのならば、配線はそれぞれ数cmくらい長めでも構わなかったのだ。組立説明書の記載では、何故あんなにもギリギリの長さで書かれていたのか、ちょっと不可解である…。これから製作される方々は、是非ともこの点にもご留意下され。
そして、どうにかこうにか、完成にこぎつけたのだ。幸いなことに、この後、ACアダプターを繋ぎ、電源を入れたところ、全く何の不具合もなくVUメーターは作動した。苦労(?)が、全て報われたのである。
下の写真は、真空管アンプとレコードプレーヤーに、このVUメーターを繋いで使ってみたところ。真空管の仄かな灯りと、レコードプレーヤーの回転数チェックの赤いランプ、そしてVUメーターの電球が輝いている。
何とも、ノスタルジーを感じさせる光景である。…と言っても、僕はどちらかといえば、真空管アンプの世代ではないのだけれども。それでも何か、この様子に安らぎを感じてしまう。
このときにかけていたレコードは、ラフマニノフの『交響曲第2番』。サー・エイドリアン・ボールト指揮の、約60年前の録音である。そのサウンドもまた、ノスタルジックだった。(そのレコードについての投稿は、こちら)
さて、VUメーターの動作テスト動画を作ってみた。画面の前で、ニコン P900を三脚に据えて撮影したのである。
(ちなみに、このサイトでは、1ファイルにつき10MBまでというサイズ制限があるので、この動画を撮影後、ファイルを何度も切り直して調節したのだった。18秒まで切って、やっとこさ9.9MBである。いやあ、10MBの制限はキツイですう…w)
この映像は、先達てビデオを発掘した、小澤征爾、サイトウ・キネンのバッハ『マタイ受難曲』の終結合唱の一部。合唱が始まると、針が一気に振れる。これが何とも、心地良いのだ…。
こうして、僕のVUメーター組立キットは、幾つかのミスを乗り越えて、無事に完成したのだった。
今は、Blu-rayプレーヤーやビデオデッキの音声出力に繋ぎ、サラウンドシステムで映画や音楽などを鑑賞するときに、このメーターを使っている。針が左右に動くのを見るにつけ、感慨無量である。
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Amazonでは、このVU-1000Xの組立キットは販売されていませんが、別の似たようなセットは売られています。下は、完成品の回路とメーター2個のセット。ケースやACアダプター、配線やスイッチ類は自分で集めることになります。
「VUメーター組み込みキット 丸型・アナログメーター&電子基板 オーディオ用」
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