高尾山に登った…の3回目。(前回は、こちら)もうだいぶ高いところまで登って来た筈だ。頂上まで、あともう少し。そう自らを鼓舞しながら、僕は蝉の鳴き声が幾重にも重なる深い森林の中へと、更に歩みを進めた。
この高尾山を登っているときにも、あとで隣の別の山から下山しているときにも、ずっと感じていたことがある。
それは、登山道を作るという行いの偉大さについてだ。道なきところに、人が登ることの出来る場所を延々と、途切れることなく頂上まで作って行く。これは、何という偉業だろうか…。
特に、高尾山やその周囲の山は、岩石が多かったようで、足元のみならず左右もそのまま岩肌となっている登山道があるのには驚いた。つまり、岩を抉って道を作ったのだろう。
その他にも、木を倒し太い根を切り、土を抉って作った登山道や、斜面の沢に飛び石を置いて道としたものなどなど、実に多様な形の登山道が、この辺りの山にはある。
それは、この山をきっと征服してみせるのだという、人間の執念を、そのまま表しているのだと思う。恐ろしいほどの執念である。僕は、そのことに対する畏怖を感じながら、また作ってくれた先人達に感謝も抱きつつ、一歩一歩進んで行った。
道なきところに登山道を作ることの途方もない苦労に比べたら、こうしてひとり分の荷物を背負って歩くことなど、如何に苦しくとも、何でもない筈なのだ、と考えながら…。
上の写真は、6号路の難所と思しき、沢の登山道である。急斜面の沢に飛び石を置いて道として利用している。石は濡れて、やや滑りやすくなっているので、注意を払いながら登る必要がある。
僕は、レザーのトレッキングシューズを履いていたので、時折わざと水の中をジャブジャブと足を浸けて進んで行った。水深は数cm程度なので、深みに足を取られることはない。滑りにくい分だけ、むしろ安全かも知れないと思う。
そして、僕は、6号路の最大の難所とは、急斜面の沢に飛び石を置いた、この登山道のことだと思っていた。かなり角度のある斜面である上に、滑りやすく足元が悪いからである。しかし、どうやら違ったようだ…。
この沢を登り切ると、暫く狭くもなだらかな、砂利道の登山道を歩くことになる。嗚呼、このまま頂上か、やれやれ…と思ったのも束の間。実は違ったのだw この先にある角を曲がった次には、丸太で作った長い長い階段が控えていたのである。これも、更なる急斜面…。
まるで、どんでん返しが2度訪れるミステリー小説のようだw あの沢の急斜面でクライマックスと思わせておいて、その先には、これまた急斜面の、長い階段である。僕は、再び意を決して、段数を大雑把に数えながら登り始めた…。
登れども、登れども、上の写真のような、丸太の階段が延々と続く。汗が噴き出す思いである。重く感じる足を、ようよう持ち上げながら、一段一段のぼって行った。数は、100をすぐに超えた。
階段の途中には、踊り場のような、立って休めるスペースがあった。ここで小休止である。でも、上を見遣れば、階段はまだ続いている。しかも、木の陰になって、その先は見通せないのだ…。
結局、200段以上はあったと思う。念入りにカウントしている余裕はなかったのでw、あくまでも概数だけれども。とにかく、延々と長く感じる階段だったのである。6号路の最大の難所は、何と言っても、この最後の階段だろうと思う。
階段を全て上ると、ベンチが幾つか置いてある広場に出た。僕は、ここでサンドイッチを食べながら休憩。一旦、靴を脱いで足を休める。後から登ってきた人たちは皆、息を切らせてふうふうと言っていた。
しかし、この場所はまだ、頂上ではないようである。この先も道は、まだ続いている。僕のポカリスエットは、1本目のクリアボトルが、そろそろ空になりつつあった。ベンチで10分ほど休んでから、僕は再び、歩みを進めた。
広場を過ぎると、突然のように、よく整備された舗装路が開けていた。今までの土や岩や木の根っこの過酷な登山道を、ここで全否定しているかのようであるw 何とも、平坦で歩きやすい道なのだ。
この道を5分ほど歩くと、無事、お茶屋のある広々とした頂上に着くことが出来た。電波塔の奥の青空には、雄大な入道雲が出迎えていた。人々は、思い思いの場所に座り、昼食を広げて寛いでいる。
頂上の中央では、記念撮影をしている人もいた。登山者には、外国人も多い。高尾山は、天気によっては富士山を臨むことが出来るので、その評判を聞いて登って来たのかも知れない。
ただ、生憎と、この日は遠くの山並みに、灰色の雲が掛かってしまっていた。富士山は、その雲にすっぽりと隠されていたのだ。しかし、眺望は抜群。ここは、標高が599mである。
僕は、お茶屋で400円を払って、スーパードライを買った。遥か遠くの景色を眺めながら喉を潤す。美味かったw 山頂で呑む一杯は、最高である。また、こんな美味さを味わえたら良いのだけれど。
さて、僕の今回の山登りは、これで終わりではない。あとふたつの山を登るつもりなのである。隣にある小仏城山は、高尾山よりも高い山だ。昼食のお握りを食べた後、僕は早速、次へ向けて出発した…。(小仏城山編に、つづく)
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