今月は、図書館で借りたDVDで、同じ監督の映画を2本立て続けに観た。デイミアン・チャゼル監督である。
ひとつ目は『セッション』という、ジャズをテーマにした作品だ。バディ・リッチのような偉大なジャズドラマーを目指す若者が、音楽学校の鬼教授から徹底的にシゴかれて成長していくという内容。
まるで、『フルメタル・ジャケット』の音楽版だなあ、と感じた。かのキューブリックの名作でも、鬼教官が登場して若い新兵たちをシゴき倒していたのだ。そして、最後には新兵が一丁前の兵士たちと化していく。
『セッション』も、そのプロセスをほぼトレースしていた。ストーリーはやや唐突に終わるけれども、非常に濃厚なこの監督の演出法が僕は気に入っていた。
もう少しチャゼル監督作品を観てみたいと思い、次作である『ラ・ラ・ランド』を手に取った。言わずと知れた大ヒット作品で、アカデミー賞やゴールデングローブ賞など多数の賞を受賞しているのはご存知の通り。
僕は、『ザッツ・エンターテインメント』3部作をDVDで揃えているくらいの(まあ、その程度の)ミュージカル映画好きなのだけれども、『ラ・ラ・ランド』はひょっとして、そのタイトルといい、ジャケットやポスターのデザインといい、とてもノーテンキな内容のお話なのではないかと思ってずっと敬遠してきた。底の浅いような物語に付き合っている時間が勿体無いからである。
ところが、実際に観はじめてみると、ものの3分でこの映画の世界にグーッと引き込まれてしまったのだ。まず、オープニングで登場する、高速道路上のフラッシュモブである。下の動画が、それ。必見ですよ…。
そして一気に、『ラ・ラ・ランド』を最後まで観終わった。翌日の早朝は15分、寝坊してしまったw 後日、吹き替えでもう一度、鑑賞。役者たちの表情や仕草、伏線など細かいところを改めて確認できた。
これは、何度観ても、非常に良くできた作品だと感じる。近年稀な大傑作ミュージカル映画だろう。もうこれは、Blu-rayのコレクターズエディションを買うしかないな、と思った。メイキングや特典映像を全部観るためだ。
『ラ・ラ・ランド』は、何と言っても最後の10分間に登場する、あの夢を見ているかのような幻想的で華やかなシーンが白眉。きっと、あれを描きたいがために作られた映画なのかも知れないとさえ思う。
そのシーンの後、主人公たちは現実に引き戻されていく…。何とスゥイートでビターなことか。これは、ノーテンキなだけの映画ではなかった。酸いも甘いもある、人生の成熟した物語だったのだ。僕は不明を思わず恥じた…。
チャゼル監督は、次作も音楽に材を取った映画を作ってくれるだろうか?何であれ、非常に楽しみなことだ。この監督の作品を観続けるために、もう少し生きてはみようか…と、まるで太宰のようについ思ってしまう程である…。
…と考えていたところ、チャゼル監督の次の作品が既にあったのだ。『ファースト・マン』という、今年公開された、アポロ11号のアームストロング船長の物語だ。宇宙ものも良いなあ。今度、是非ともDVDかBlu-rayで観よう、と心に誓った。
そういえば、決して忘れていたわけではないけどw、『ラ・ラ・ランド』主演のライアン・ゴズリングって、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『ブレードランナー2049』の主演でもあるのだ。
時折、雨に濡れた仔犬のような、シュンと目尻を下げた表情をする俳優だけれども、何気に名優だなあ。凄い凄い。これからも注目していこう…。
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ちなみに、電子辞書(ちょっと古めの「ジーニアス英和大辞典」)で、”la la land”について引いてみると、下の写真のように3つの意味が出た。
この3番目の意味は分かっていたことだけれども、1番目や2番目のように「魅力的なロサンゼルス」とか「現実離れした世界、幻覚の世界」なんていう意味もあったんだなあ。
なるほど、そこら辺をダブルミーニング(またはトリプルミーニング?)させて付けた題名だったのだ。「現実離れした世界」とは勿論、ラストのアレのことなのだろう。これは、ちょっと深いぞw
…デイミアン・チャゼル監督の映画に関する話題については、また稿を改めて書きたいと思います。
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上にも書きましたが、『ラ・ラ・ランド』のBlu-rayは、是非とも購入したいと思っています。特典映像が豊富な、下のような「コレクターズ・エディション」が良いでしょう。それまでは図書館で借りたDVDを何度も観返すことといたします…。
『ラ・ラ・ランド コレクターズ・エディション(2枚組)(オリジナルチケットホルダー付)』[Blu-ray]
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