或る音楽家との出会いと思い出(前編)

もう、かれこれ一年になる。4月中旬の日曜日のことだ。今年の同じ日もそうだったが、昨年も雨降りであった。

僕は午後から、ある音楽会のために、市民会館へ向った。目当ては、後半で演奏される『さよなら銀河鉄道999』という30数年前のアニメ映画の組曲を、ウィンドオーケストラで聴くことである。
『さよなら銀河鉄道999』とは、僕にとって、生涯のベスト3の中に入るアニメ映画のひとつだ。いつ観ても、ストーリーといい、絵といい、音楽といい、いずれもが極上の出来であると感じられる。そんな作品だ。
しかも、その作曲者である東海林修先生が、特別ゲストとしてこの音楽会に来場されるという。憧れの作曲家のひとりに会えるとなれば、もう断じて行かない手はない。

さて、東海林修先生といえば、学校などで合唱をやっていた方にとっては、「怪獣のバラード」の、また吹奏楽の方たちにとっては、「ディスコ・キッド」の作曲者、ということでお馴染みだろうと思う。
また、全盛期の野口五郎の音楽プロデューサーでもあり、音楽好きのアニメファンにとっては、「デジタル・トリップ(シンセサイザー・ファンタジー)」シリーズの編曲者およびシンセ奏者としてご記憶だろう。実に、多彩な活躍をされてきた音楽家なのである。

その音楽会の当日は、よりによって暴風雨になった。僕は、午前中に仕事をしていた場所から、そんな雨の中を自転車で移動。そのせいで荷物が、すっかり濡れてしまった。
僕のバッグの中には、CDが入っていたのだ。あわよくば、先生にサインをお願いしよう…という算段なのである。紙ジャケットだったので、浸食した雨で端っこが濡れて、生憎ちょっとシミになってしまった。今や、希少盤の、高価なCDだというのに…。

会場の聴衆の入りは、3割位といったところだろうか。余り多くはない。元々、東北の震災復興のチャリティーとして開催されたコンサートだということもあって、事前の宣伝にはそれほど多くの費用を掛けなかったのかも知れない。ふと、そんな気がしたのである。

入場するとすぐに僕は、最前列の「関係者席」と貼り紙がある座席のそばに陣取った。
そして、開演の2~3分くらい前に、娘さんだろうか、そのくらい年齢の、上品な佇まいをした女性と一緒に、東海林修先生は来場された。おふたりは、例の貼り紙の座席に座ったのである。思った通りだ。僕の席とかなり近い(…というか、通路を挟んだ、まさに隣)。これは、大チャンスだ!

(後編に続く…)

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映画『さよなら銀河鉄道999』のCDは、オーケストラ版(交響詩)とシンセサイザー版(デジタルトリップ、上の写真で右上)の2種類あります。

下のCDは、映画のオリジナル・サントラで、オーケストラ版(交響詩)の方です。

『交響詩 さよなら銀河鉄道999-アンドロメダ終着駅-』(紙ジャケット仕様)
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