ちょっと珍しい光景を写真に撮ることが出来た。トップの写真である。
朝から降っていた雨が少しの時間だけ止んでいた、その合間のことだった。いつものように、アゲハチョウの幼虫が、蜜柑の小木にいた。だいぶ大きくなっている。きっとこれは、先達ての投稿に載せた虫かもしれない。
木をよく見ると、その手前に、赤とんぼがじっと止まっている。濡れた羽根を休ませているのだろうか。地を這うものと、空を駆けるもの。夏の虫と、秋の虫。何とも対照的な気がする。
早速、家へカメラを取りに戻って、この写真を撮影したのである。その間も、赤とんぼは、ずっと動かずにいてくれた。きっと、暫くの間は飛べなかったのだと思う。そんな、雨間の光景であった。
(カメラのフォーカスが上手くいかず、どうしても赤とんぼがピンボケだw)
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先達て図書館で借りた、『日の名残り』のDVDを観た。今年のノーベル文学賞を受賞した、カズオ・イシグロ氏の原作である。
僕は、20数年前にビデオ(VHS)が発売された際に、これをレンタル版で一度観たように思う。その当時、ビデオ店でアルバイトをしていたのである。
夜12時閉店後の締め作業の後、店長(社長でもあった)のご機嫌が良いと、一本サービスで好きなビデオを借りて行っても良い、ということがあったのだ。
それを利用して、僕は随分と沢山の映画作品をビデオで観ることが出来た。人気作は常に貸し出し中なので、どちらかといえば、ややマイナーな文芸作品を借りることが多かった。
例えば、ゲイリー・シニーズ監督主演、ジョン・マルコヴィッチ共演の『二十日鼠と人間』などは特に印象深い。こちらも、原作はノーベル文学賞作家。ジョン・スタインベックだ。
怪優マルコヴィッチの演技が光る秀作である。いや、確実にこれは、名作だろう。
あの衝撃のラストによって、ひょっとすると、今で言う「鬱映画」の範疇に属するのかも知れない。しかし、これが人の世の、ひとつの真実なのかも知れないと、この作品を観て(読んで)思うのである。
嗚呼、『日の名残り』のDVDについてであった…。
こちらは、最後にどんでん返しが起こるような作品ではない。実に、実に穏やかに、ストーリーは進行していく。第二次大戦前と後の、パラレルの構成になっている。つまり、回想の物語なのである。
だから、『日の名残り』(原題は”The Remains of the Day”)なのか…。僕は、パラレルの構成に途中まで気づかなかった(苦笑。でも、十分に物語を楽しむことが出来た。面白かったので、確認のためにも、また観ることになるだろう、と思う。
主演のアンソニー・ホプキンスは、『羊たちの沈黙』のレクター博士役で余りにも有名。それは、この『日の名残り』の2年ほど前のことである。
僕は、ジョディ・フォスターのファンでもあるので、『羊たちの沈黙』は、もう何度となく観た。アンソニー・ホプキンス=レクター博士の図式が、殆ど刷り込まれてしまっているのであるw
しかし、『日の名残り』では、実に紳士然として、表面上は常に落ち着いた状態でいるという(…そういえば、この辺はレクター博士と同じだ…)、忠実な執事の役を演じている。
そこに、エマ・トンプソン演じる、女中頭が絡んでくるのだけれども、時にふたりはニアミスのような関係になりながらも、互いに堕ちていかない、というところが、大人の物語なのである…。
英国のお屋敷を舞台にした、豪華な舞台の作品で、色彩も豊かで絢爛。夕焼けの中をダイムラーが走るシーンなどは、息を呑む美しさだった(…下手な画面撮り写真で、ご容赦を)。きっと、Blu-rayで観れば、もっと綺麗なのだろう…。
音楽も、ストーリーに合わせてか、抑制が効いていて、実に上手い。同じ英国の制作というせいもあるのかも知れないけれども、嘗てNHKで放送していた『シャーロック・ホームズの冒険』を想起させるのである。画面も、音楽も。制作年代も近いせいだろうか。
このふたりは、『日の名残り』の前に、『ハワーズ・エンド』で共演をしている。この作品も昔、観たような気がするのだけれども、覚えていない…。
何せ僕は、『刑事コロンボ』の各作品のストーリーが余りにも覚えられず、同じものを何度でも観て楽しめるという特技(?)の持ち主であるw 他の映画作品でも同様で、内容をちゃんと覚えていることは少ない。
この『日の名残り』での、アンソニー・ホプキンスとエマ・トンプソンの共演がとても良かったので、次は機会があれば、『ハワーズエンド』の方も観てみようか。ちなみに、監督は同じ人(ジェームズ・アイヴォリー)なのである。
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DVD版は、たったの1,000円で買えるんですね。いま気づいた…。しかも、カズオ・イシグロ氏のインタビュー映像特典付き。何度も観て堪能できる作品だと思うので、うーん、これはお買い得なのかも。
『日の名残り』(DVD)
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