息子の誕生日である。17歳になった。
僕は、自分の誕生日なぞ、もうちっともめでたいとは感じなくなったのだけれども、子供のそれについては素直に慶ばしく思う。自分の17歳のときが、まるで2、3日前の出来事のようなのに、子供がもう、その歳だなんて不思議な感慨がある。
誕生日プレゼントは、ポケモンの最新作。先達ての投稿に書いたように、もう先週からプレイし始めているw
さて、息子の高校の定期試験の結果が一部、返って来た。数学は、学年1位である。2位は、同級生のT君だと言う。あと、化学は2位だ。1位は、T君なのだそうだ。どうも、この2人は理数科目でワンツーを争っているようである。
でも、T君は物理が不得意(公式をあまり暗記していないから)なので、それは息子が1位になる見込みらしい。物理の答案が返ってくるのは、これからだ。翻って、T君は英語が得意のようである。息子は、英語が大の苦手…。まあ、どっちもどっちであろう。
僕の実家からも、誕生日プレゼントが送られて来た。昨日届いたのである。それは、母が選んだ紺のダウンベストだった。息子が言うには、これは何と、T君が学校に着て来ているものと同じなのだそうだ。まあ、随分と、よく出来た偶然だなw
今日早速、息子もそのダウンベストを制服の上着の中に着て、自転車で登校して行った。それは、T君と同じ着用の仕方なのだ。ふたりは、そんな良いライバル同士なのである…。
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トップの写真は、クレジットカードである。某大手ポータルサイトのロゴが入っている。全く同じものが2枚。どちらも、僕の名義だ。これには訳がある。
もう先月のことになるけれども、息子の高校の文化祭を観に行った。大雨だったので、学校まで送りがてらなのである。そのときの投稿は、こちら。
僕は少々時間を潰して、見学時刻になるのを待つことにした。それから、息子のお昼ご飯として、コンビニで買った幾つかのお握りを差し入れるつもりだったのだ。息子は、部の展示の店番があるので、食べに出ることが出来ないからである。
車で、手近なコンビニに入り、息子の好きそうな具が入っているお握りを選んだ。肉や海老である。会計を済ませようと、レジの前で、僕は財布を開く。そのとき視野に、ある不協和音を感じたのだ。
カードを差し入れるスリットのひとつが、空白になっていた。僕は、財布の中にカードなどを入れる際、それぞれの差し込む場所を全て決めてある。その空いているところに入っていたのは、クレジットカードだ。
悪寒を感じた。スーッと意識が遠のくような。そのカードを最後に使ったのは、いつだっただろう…。白い小さな袋に入ったお握りを受け取りながら、大急ぎで記憶を辿っていく。
雨の降る中を足早に車へと戻ると、僕は思い出した。2日前、早朝の仕事を終えたあと、ガソリンスタンドに立ち寄ったのだ。セルフ式である。いつものように、クレジットカードを機械に入れて支払った。
ひょっとして、機械から取り忘れたのではないか…。僕はクレジットカードを置き去りにして、帰宅してしまったのか…。そんな思いに囚われた。もう、誰かに拾われてしまっただろうか、それとも、その前に店の人が気づいてくれて…。
眩暈が、僕の思考を次々に掻き回していく。フロントガラスは、向こうにあるコンビニの建物を、じっとりと歪ませて映し出す。今日はiPad miniを持って来ている。文化祭を撮るためのカメラとして使うためだ。
僕は、コンビニのフリーWi-Fiに接続して、クレジットカード会社の緊急連絡先を検索した。そのページが表示されると、電話番号の部分を、スクリーンショットで保存した。
今時分、とても珍しがられることだけれども、僕は携帯電話を所有していない。だから、これから公衆電話が必要になる。息子の高校のそばに建っている団地の一角に、それがあることを僕は知っている。
コンビニの駐車場から車を出すと、視界の悪い中を慎重に、そこへ急いだ。だれも使っていなければ良いのだけれども…。得てして間の悪いことに、こんなときに限って、ということが往々にしてあるものなのだ。
運転をしながら、思った。クレジットカード会社へ連絡する前に、ガソリンスタンドへまず電話を架けてみよう。もし店の人が僕のカードを見つけていたら、取っておいてくれているだろう。
余りに楽観的な予測だけれども、訊いてみる価値はあった。でも、はて、財布の中に10円玉は幾つあっただろうか?こんな非常時に限ってひとつも無いとか、まさかまさかね…。
公衆電話は、無人だ。団地の中には、「構内の駐車 ご遠慮ください」の掲示が見えたけれども、こんな非常時である。申し訳ないと思いつつ、ハザードランプを焚いて電話ボックスの前に停めた。車が往来できる余地は残してある。
僕は、iPad miniを持って電話ボックスに飛び込むと、財布の中から、2日前に給油した際のレシートを取り出した。下の方に店名や電話番号が印字されている。急に、口の中で乾きを覚え始めた…。(後編に、つづく)
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