先達ての日曜日、かの場所からシンガポールに向かった珍しい機体について。あと、非常時には、これを武器代わりにすれば良いと聞いたのだ…

僕が早朝の仕事として行っているところには、様々な人たちが来ている。これまでの投稿にも、WさんやYさんなどが登場してきた。それぞれ、別の本業をお持ちなのである。
例えば、Yさんは現在、自転車屋さんだ。その仕事を始める前には、幾つかの職業を経験してきたらしい。そういったタイプは他にもいて、Iさんも、そのひとりである。

Iさんは、Yさんよりやや年上の60代初め。でも、そうは見えないくらいに、身のこなしが軽く、アクティブ。それもその筈、若い頃はプロのボクサーだったそうなのだ。
その後は、居酒屋だったかスナックだったかを経営しておられた頃もあったようだ。従って、そういった店で出てくるような料理に関しては一家言をお持ちである。

また、現在はボクシングではない、ある格闘技の道場も開いているのだと言う。僕もちょっと誘われたことがあったけれども、生憎と僕は競技的なものに関しては、観るのもやるのも殆ど関心がないのだった。
そんなIさんが、先日興味深い知識を教えてくれた。先達ての、新幹線における殺傷事件の話題を受けてのことである。Iさんは、身の回りの意外なものが武器になり得ると言う。

だから、いざという時には、そういった物を使うしかない。でも、結局は走って逃げた方が手っ取り早いんだけどね…とも言っていた。その、身の回りの物とは、例えば何か?
もし相手が、今回のあの事件のように、ナイフを持っていたとする。その場合には、相手よりも長いリーチとなる物であれば有利である。例えば、ベルトだ、と言う。

もし間に合うのであれば、咄嗟にベルトをズボンからスルスルと外す。ベルトは、それ自体に相当の長さがあるし、バックル(金具の部分)が固いので、相手に向かって振り回せば結構有効なのだそうだ。
ベルトでなくとも、例えばショルダーバッグの取り外し可能な肩紐(ショルダーストラップ)などの部分もそうかも知れない。あれには大抵、カラビナのような金具が付いているので、ベルトと似た使い方が考えられると思う。

Iさんは、この話をいざというときに対処する為の知識のひとつとして教えてくれた。従って、悪用するのは厳禁である。あと、上にも書いたように、「結局は逃げるのがいちばん手っ取り早いのだけどね。でも覚えておいて損はないよ…」と、Iさんは言っていた。
ひょっとしたら何処かで、窮鼠猫を噛む(噛まなければならない)というような場面に追い込まれ、どうしても反撃が必要なことがあるかも知れないのだ。周囲には棒などが落ちていない、どうすべきか?…などというときの対処法のひとつなのである。


さてさて、前回の続き。先日の土日にかけて、平壌発シンガポール行きの機体を、フライトレーダー24で観察したのだ。
いずれも、エアチャイナであった。幾つかの報道によると、日曜日のボーイング747の便の方に、金正恩が搭乗していたのである。その機についても、僕はシンガポールの着陸までウォッチし続けたというわけだ。そこまでが、前回のお話。

また、海外のマスコミによるやや詳しい報道によると、その747機とは別に、約1時間遅れで別の機体が平壌を発ったのだと言う。それは、エアチャイナ機ではなく、北朝鮮の政府専用機なのだそうだ。
つまり、その機体は、今回の米朝首脳会談の開催が発表になった頃に一部で話題となった、旧ソ連製の旅客機のことである。余りにも旧くて、果たしてシンガポールまで飛べるのか?なんて巷間では言われた、あの機体だ。

それが、何と今回、シンガポールに向けて旅立ったのだ。金正恩を乗せた747の後を必死に(?)追うようにして、それは飛び続けた。そして、それは無事、シンガポールに着いたのか?それは、以下をお読み頂きたいと思う…。(今回も、以下は日本時間の表記です)

僕がこの機体の姿をフライトレーダー24で捉えたのは、例の747機がシンガポールに着陸する暫く前のことである。747機が辿ったルートを遡って、1時間遅れくらいの場所を観察しているうちに、見慣れない航空会社のアイコンが付いた機影を見つけたのだ。
そのスクリーンショットが、上の写真。747機と同様、公海上にすぐ出るのではなく、中国上空を縦断するように飛んでいる。フライト信号は、何故か北京を過ぎた辺りから出し始めたようだ。ちなみに、航空会社は、高麗航空という北朝鮮の国営企業である。

あと、南シナ海に出るあたりでは、飛行ルートの取り方が直線的になっているのが分かる。金正恩が搭乗している747機の場合、左に90度の角度で曲がったりと、実に丹念なルートを取っていた。それと比較すると、やや大雑把に見える。
加えて、注目すべきは、この機種である。このIl-62Mという旅客機は、旧ソ連の航空機設計局だった、イリユーシンというところがつくったものなのだ。北朝鮮政府専用機のこの機体は、1979年から使われ始めたらしい。

実に、彼此40年近くも使われ続けている旅客機なのである。上の写真2枚をよく見ると、水平尾翼は、垂直尾翼の上の方についている。近年では既に見られなくなっている形である。
其れもその筈、この機種は、ジェットエンジンが機体の後部に備えられている。これも、今では殆ど見られない形式である。僕は辛うじて、先達て家の上空を飛んでいるマクドネル・ダグラスのMD-11を撮ったところだった。

下の写真は、ネットでの拾い物。Il-62Mの模型の写真である。後部に張り出した4つのエンジンの姿が相俟って、実に近未来的な形に見える。これが今でも現役で飛んでいるとは、実に興味深いことだ。

さて、この政府専用機、順調に飛行を続けた。航続距離は、この機種の場合、1万km近くあるそうなので、「本当にシンガポールまで飛べるのか?」という心配(?)は杞憂のようである。
しかし、金正恩が搭乗した747がシンガポールに着陸後、この政府専用機だけを観察し続けていた僕は、ある奇妙な現象を目にすることになる。下は、シンガポールを目前にしたときのスクリーンショット。

既にマレー半島の先端が見え、南の方にはシンガポール・チャンギ国際空港がマップに出てきている。予定のルートが真っ直ぐにそちらへ向けて伸びているのも見て取れる。この瞬間、あることが起きた。

この政府専用機の機影の進行が1~2分間停止し、その後、フライトレーダー24のマップ上から突如として消えたのである。時刻は、16:30過ぎであった(日本時間)。上は、その直後のスクリーンショット。
他の航空会社の機影の位置がそれほど変わっていなことにお気づきになるだろうか?つまり、その間に政府専用機側がフライト信号を消したのだろうと思われる。目的は不明だ。僕は当初、すわ墜落か⁉︎と驚いたのだけれども、そういった報道がないので事故ではない筈だ。

普段、フライトレーダー24を眺めていると、例えば日本の航空自衛隊の哨戒機が、ある場所からフライト信号を出したり消したりする場面を見かけることがある。従って、マップ上での飛行ルートの線も、途中で切れていることがあるのだ。
軍用機であれば、軍事上や防衛上の機密があるので、そういった挙動も十分に考えられる。でも、行き先の既に表示された旅客機が着陸直前になって信号を切るというのは、如何にも珍しい気がするのである。

そんな訳で、この北朝鮮の政府専用機の着陸場面までは、フライトレーダー24で観察することが出来なかった。やや残念ではあるけれども、このような珍しい機種を暫くの間でもウォッチ出来たのは僥倖としておこう、と思っている。

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