父と息子、坂本龍一。

先日、NHKで坂本龍一のインタビューが放送されていた。
僕は、普段はまず、TVを見ることなど殆どないのだけれども、この日だけは大急ぎで帰宅し、NHKの放送をプロジェクターで壁に映して(…うちはリビングにはTVを置いていないので…)、夕飯を食べながら、じっくりと見た。

インタビュアーのアナウンサーが、良くリサーチをした上で、なかなか的確な質問をしてくれたお陰か、短い放送時間ながらも内容の濃い番組になっていたと思う。僕も、『async』に対して、より一層理解が深まった気がする。

何よりも、坂本龍一がこの新アルバムを「最後の作品のつもりで作っていた」と発言していたことがあった、というのは興味深かった。僕は、以前のエントリに書いた様に、これは坂本龍一の遺書のようなものかも知れない、と捉えているからだ。ある意味において、やはりこれは、命懸けの作品だったのであろう。

坂本龍一は、3年前に癌を患って以来、かなり痩せた。一緒に放送を見ていたかみさんも、驚きながらそう言っていた。しかしながら、痩せて細面になってきたことによって、坂本龍一は、父親にますます似てきたのではないか、と思う。

坂本龍一の父親は、河出書房の名編集者で、三島由紀夫や野間宏などを担当していた。名は、坂本一亀といい、「鬼のワン亀さん」と周囲から恐れられていたらしい。坂本龍一も、子供の頃などは特に、父親と目を合わせて話をすることが出来なかった程なのだそうである。

坂本一亀氏は、15年前に亡くなっている。僕も当時、新聞で死亡記事を読んだ記憶がある。結構有名な人だったのだ。
その後、上の写真に写っているような評伝が出版された。坂本龍一が、父親のことを本にして欲しい、と生前からこの評伝の筆者に依頼していたそうなのだ。その表紙には、40代の頃の一亀氏の写真が載っている。
これまでは、この写真の一亀氏と坂本龍一が似ているという気が、僕には余りしなかったのだけれども(しかし、面影の様なものを感じてはいた)、改めて今回の放送の中の坂本龍一を見ると、やはりよく似ている。上述の様に、坂本龍一が癌でだいぶ痩せてしまったせいもあるのだろう。

坂本龍一は確か、7~8年くらい前からか(つまり、癌になるもっと以前から)、何故か丸眼鏡を好んでかける様になった。
一部では、大江健三郎みたいだ、などと揶揄されたけれども、きっと自分の父親がかつて同じ様な形の眼鏡をかけていた為なのかも知れないと、この本の表紙を見て思う。坂本龍一は、父親が亡くなって暫く経った頃から、かの面影を徐々に意識して、追い始めたのだろうか…?

一亀氏は80歳まで生きた。坂本龍一は、今年で65歳。それを考えれば、まだまだ前途たる年月は十分に残っている様に思われる。一ファンとしては、是非とも『async』の次の、更なる音楽的な展開を今から期待したいのだ。

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一亀氏の様々なエピソードが満載。坂本龍一ファンは必読かも…。

『伝説の編集者 坂本一亀とその時代』
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