先週のことだけれども、暑い中を少し珍しく、スーツを着ながら仕事したのである。年に数回だけれども、そんなこともあるのだ。しかし、汗はかくし、肩は凝るしw、とても疲れてしまった。もう、家に帰って晩御飯を食べたら、バタンキュー…。
その翌日には、ラフマニノフの演奏会に行くつもりだったのである。アマチュアオーケストラの演奏で、モーツァルトの「魔笛」とラフマニノフの「交響曲第2番」だ。
それで、僕は、今さら魔笛は聴きたくないけれどもw、ラフマニノフは聴きたかった。とにかく疲れているので、聴きたくないものまで聴く元気はないw
さて、魔笛は、全曲版か、それとも抜粋でやるのか。チラシには、「歌劇≪魔笛≫K.620より」という具合に「…より」が付いているので、抜粋の可能性が大だろう。でも、何曲やるのだろうか?という疑問が湧く。
うーん、疲れているのに、無理してまで行くこともないだろうか?でも、聴いてみたいなあ、アマチュアのオケのラフマニノフを…なのである。ここは思案のしどころだ。
僕には、ラフマニノフの交響曲第2番の、愛聴盤がある。以前の投稿でもご紹介した、骨董品のようなLPレコードだ。エイドリアン・ボールト指揮でロンドン・フィルハーモニックの演奏である。
このレコードには、A面に第1~第2楽章、B面に第3~第4楽章が収められている。僕は、そのB面を聴くことが圧倒的に多い。この交響曲の最大の聴きどころは、第3楽章のアダージョだと考えているからである。
そこで、今回のアマチュアオーケストラが、この演奏会で第3楽章をどのように演奏してくれるのか、非常に興味があった。
そして、翌日。お昼頃になって、ある考えが浮かんだ。考えと言っても、至極単純なことであるw そのオーケストラの公式ページから、ラフマニノフの演奏予定時刻を問い合わせれば良いのである。でも、もう演奏会の開演の数時間前。返事が来るのは五分五分かな、とも思った。
しかし、果たせるかな、問い合わせを書き込んでから、15分くらいで返事が来た。しかも、実に丁寧な文面で。有難いことである。
これで、僕の心は決まった。ラフマニノフのその時刻に合わせて出かければ良い。それまでは、家で英気を養うことにしようw
そして、会場へ行った。到着した時はちょうど、曲間の休憩時間中であった。教えて貰った通りである。聴衆の入りは、9割ほどであろうか。心なしか、お年寄りが多いな…とは思ったけれども。
さて、このオーケストラのラフマニノフ、予想以上にかなり良い演奏であったのである。
特に、ヴァイオリンが良い。指揮者(ちなみに、プロ指揮者)も、その辺りをよく承知しているようで、左方のヴァイオリンへの指示出しは、実に入念なのであるw
その代わりと言ってはアレだけれども、管楽器が弱かったように思う。第1楽章の冒頭で、ホルンの和音が幾分フニャーと鳴ったときには、この曲どうなっちゃうの?と思ったけれども、第2楽章で弦楽がとても頑張っていたので、この曲はきっと大丈夫だろうと、僕は思い直したのである。
(第1楽章の冒頭部分)
何故ならば、この曲の肝(…というか僕自身にとってのいちばんの聴きどころ)は、まさしく第3楽章の弦楽に掛かっているからだ。
この第3楽章では、もうヴァイオリンがむせび泣くように良く鳴ってくれたのである。これには、シビれにシビれた。ゾクゾクするような名演の音である。金管の音が弱くとも、クラリネットの主旋律が多少ぎこちなくとも、それは許せたw 全ては、ヴァイオリンの名演奏が帳消しなのである。
(第3楽章の最高音付近)
ちなみに、コンサートマスターも、プロの方だったようだ。特に、ヴァイオリン奏者全体をよく引っ張っている感じが、客席にも伝わってきたと思う。
第4楽章は、もう第3楽章の名演のオマケみたいなものであるw 聴いている方としても、第3楽章で精魂が尽きたw でも、打楽器がよく頑張ったぞ。大団円の終曲だ。
そして、アンコールは、指揮者の方が「長くお聴きいただいたので、短い曲を。こちらもラフマニノフです」と言った瞬間、僕は、ああヴォカリーズをやるのだろうか、と思ったのである。やはりそうであった。これまた、ヴァイオリンの名演奏を堪能できた。もう、お腹いっぱい、大満足であるw
これで、入場無料だったのだから、恐れ入ってしまう。チラシやプログラムを見ると、この演奏会には、教育委員会やトヨタなどの幾つかの企業からの協賛や後援があったようだ。これらの企業には感謝を申し上げると共に、今後もご支援くださるよう、聴衆のひとりとして是非ともお願いをしたいと思うのである…。
#ラフマニノフの交響曲第2番の第3楽章は、こういった曲です。別のオーケストラの演奏ですが、これまた素晴らしいです。どうぞお楽しみください。(指揮は、アンドレ・プレヴィン。オケは、N響ですね)
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こちらも、最近の僕の愛聴。「交響曲第2番」のあと「ヴォカリーズ」に続くという、今回の演奏会と同じ流れというのも、嬉しい。指揮は、上の動画と同じくプレヴィン(の、もっと若い頃)です。
『ラフマニノフ:交響曲第2番/他』(CD)
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