珍品!? ラフマニノフのピアノ協奏曲「第5番」…

前回、ラフマニノフの交響曲第2番の演奏会に行ってきた、ということを書いた。予想以上の、実に素晴らしい演奏だったのである(…特にヴァイオリンが)。

そんな興奮も冷めやらぬうちに、先達てネット通販で注文しておいた、ラフマニノフのCDが届いた。輸入盤である。中古を頼んでおいた筈が、またまた未開封品だw
このCDのタイトルは(日本語に訳すと)、『ラフマニノフ ピアノ協奏曲"第5番"』だ。おもてにはデカデカと、ローマ数字で「V」なのであるw(上の写真をご参照)

さて、何故「"第5番"」の部分にダブルクォーテーション・マークが付いているのか?

実は、ラフマニノフが生涯作曲したピアノ協奏曲は、第4番までだったからである。だから勿論、以前ご紹介した、ヴァレンティーナ・リシッツァの『ラフマニノフ ピアノ協奏曲全集』に収められているのも、第4番までだった。

では、この"第5番"とは何かというと、ラフマニノフの交響曲第2番の編曲版なのである。つまり、誰かが、その交響曲をピアノ協奏曲に編曲し直して、「ピアノ協奏曲"第5番"」ということにしたのだ。
うーん、そんなことしちゃって大丈夫?という気がしないでもないけれども、Wikipediaによると、ラフマニノフの孫や関係団体からの承諾を取ってあるのだという。つまり、公認の作品、というわけなのだろう。これは、ちょっとした珍品であるw

早速、シュリンクラップを解いて、開封してみる。おや、未開封品だったのに、CDのレーベル面に黒い指紋汚れが…。上の方と下の方の2箇所も、なのである。多分、工場の人がケースの中にCDを押さえ込む時に付いたのであろうか、という気がする。
ティッシュをアルコールのジェルで湿らせてゴシゴシ拭いたけれども、完全には落ちない…(その状態が、下の写真。まだ汚れが残っている…)。まあ、音楽の内容そのものには関係ないことなので、これで我慢しておこう、と思う。

この編曲を行なったのは、アレクサンダー・ヴァレンベルクという、ウクライナ出身のピアニストで作曲家。(ちなみに、ヴァレンティーナ・リシッツァもウクライナ出身である)
CDに添付のライナーノーツ(英語)を読むと、このヴァレンベルクは、5代続く音楽家の家系なのだそうだ。お祖父さんは、リムスキー・コルサコフの門下生だったのだそう。そのような、由緒ある血統の出身らしい。
別のページには、このCDのプロデューサーである、ピーター・ファン・ヴィンケルという人が、2000年のクリスマス休暇中に、この着想を得て、ヴァレンベルクに編曲を依頼した…といういきさつが書いてある。


(編曲のアレクサンダー・ヴァレンベルク)

ピアニストは、ヴォルフラム・シュミット=レオナルディという人。ライナーノーツには、写真と共に、「ラフマニノフの天才的な宇宙と共にある、新しいピアノ協奏曲」などなどのコメントが載っている。


(ピアノのヴォルフラム・シュミット=レオナルディ)

さて、実際に聴いてみると、これが意外と(!)イケるのだ。ラフマニノフとは別の人が書いたという、違和感を感じさせない出来である。決してキワモノと思っては、いけないw
交響曲の4楽章形式を、ピアノ協奏曲の3楽章形式に変えて、ラフマニノフの、あのダイナミックで繊細なオーケストレーションはそのままに、ピアノも実にラフマニノフっぽく編曲してある。つまり、如何にも手の大きい人が作りそうなフレーズがよく出てくるのだ。(ラフマニノフは、手が大きかったことで有名)うーん、なかなか凄い…。ヴァレンベルクは、かなりのラフマニノフおたくなのではないだろうか?

是非、ヴァレンティナ・リシッツァにも演奏してもらいたい逸品である…と思っていたら、リシッツァと一緒に『ラフマニノフ ピアノ協奏曲全集』を録った、指揮者のマイケル・フランシスは、既にこの「ピアノ協奏曲第5番」を、別のピアニストの演奏でリリースしていたのである。


(出典:マイケル・フランシス公式サイト「Dicsography」より)

このとき、何故ピアノがリシッツァでなかったのか不明だけれども、機会があれば是非とも、こちらの演奏も聴いてみたい、と思う…。

さて、この『ラフマニノフ ピアノ協奏曲"第5番"』だけれども、YouTubeで丸々聴くことができる。ただし、音質は余りよろしくない。まあ、CDを買うかどうかを決める際の試聴にはなると思う、ということで…。(僕も、これを聴いてからCDを注文したのだ)

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発売元の「ブリリアント・クラシックス」は、オランダにあるレコード会社のようです。僕は、この会社を今回初めて知りました…。

『ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第5番(交響曲第2番から編曲) 』(CD, Import)
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