2018年1月31日の晩における皆既月食について、その2である。(その1は、こちら)
月は満月から始まり、徐々に影の部分が増えていった。普段の満ち欠けとは異なって、何ともふわっとしたような幽玄な、光と影とのきわである。その部分には、クレーターが浮き上がって見えることもない。その点も、いつもと異なる。
一旦、光の部分が全てなくなると、月はその色を赤銅色に染めた。地球の大気の影響によって、太陽光の青色は拡散され、月には赤い光が届く。そのために、赤っぽく見えるようになるのだと言う。
トップの写真は、その赤銅色の最中に撮ったもの。余りズームさせずに、やや引いた。周りの恒星たちが、月の伴星のように寄り添って見えるのである。
この頃合いになると当然、月の光が殆ど無くなるので、このように周囲の星が見て取れるようになる。地上から空を見上げていても、ああだいぶ暗い夜になってきたな、と実感できる程だ。
前回ご覧いただいたように、月食が始まった当初、ニコン P900のトワイライト撮影モードを多用して撮影した。自分の好みの色に撮れるのが楽しかったからである。こうして、このカメラの様々なモードを試すのも、今回の目的だ。
そこで、この赤銅色のタイミングでは、高感度モノクロモードで撮影してみた。月の周りの星たちをもっと沢山捉えてみようとするのだ。モノクロなので、赤い月が見られなくなるのは仕方がないけれども。
こうして撮影したのが、上の写真だ。何とも、古い白黒映画作品の一場面のようになったw ちょっとレトロな雰囲気である。いい感じだ、と思う。
トップの写真と比べて、写り込んでいる恒星の数は増えた。このとき確か、月は蟹座のあたりに位置していた筈である。その周囲の、普段は余り肉眼では見られないような等級の星たちなのだろう。こうして注目を浴びることになったのだ…。
上のように、赤い月をズームでも撮ってみた。4000mm相当の望遠である。約170倍だ。当たり前のことだけれども、ズームで見ても、とても赤いのであるw
赤く見える仕組みについては、上に書いた通りなのだけれども、太古の人々は、そのような事実を知らなかったと思うので、こんな赤い月をさぞや不吉に感じたことだろう。今回は、この状態が1時間以上も続いた。
僕は、この間、腹ごなしに紫芋チップスを食べながら、ここまで撮った写真を何枚かセレクトして、SNSにアップした。速報として、フレンドたちに見て貰うためである。キャプションは日英両語で書いた。
だいぶ長かった赤銅色の時間である。CGクリエイターのKAGAYAさんは、この間に、東京スカイツリーから東京タワーに移動して、両方のタワーのてっぺんを構図に取った皆既月食の写真を、其々撮影されたのである。なかなか凄い…。
午後11時15分を過ぎた。皆既食の時間が終了すると、徐々に端の方からまた明るくなり始める。今回は、それが下からだった。月が再び満ちてゆくのだ。ファインダーからは、隙間から漏れ出づるようにして、眩しく光が射すのが見えた。
この光り方もまた、相当に不思議なものだ。何か効果音でもあった方が良いのでは、と思える程に劇的。数件向こうの民家から、いきなり窓を開ける音が聞こえ、「うわあ、ヤバイよヤバイよ」と男女の歓声が聞こえる。しかし、それだけ言って、また窓は閉じられたようだった…。
こうして明るくなり始めると共に、月はまた白く色を戻す。地球の大気を通さずに、太陽から直接光を受けるようになるからだろう。僕は、その頃合いを見計らって、P900を再びトワイライト撮影モードに設定した。
下の方から光り始めたその上に、ラベンダーの月面が載っている。通常のモードで撮影すると、白く写る月面なのである。また暫く、このモードで撮影を楽しんでみようか。そう思った。
さて、このようにして赤銅色タイムを終え、月は満月に戻ろうとする。ここまでで、当初予報されていたような雲は全く見られなかった。実に天候に恵まれた皆既月食だったのである。
実は、このあと天気が徐々に変化していくことになったのだ。その絶妙さたるや、僕なんかは、これは神の経綸か?という言葉が頭に浮かんでしまった程なのだ。そのくらいに、よく出来ていたタイミングなのだった…。(その3に、つづく)
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