…「あっ、パパ!」という幼い声が聞こえた。
塾の仕事に行くために、スーパーやマンションなどが建ち並ぶ一角を足早に歩いていたときだった。僕は普段、中学の生徒たちから、歩くのが早いですね、と言われることがある。
歩道に、見知らぬ二十代のスレンダーな女性が、ベビーカーを押しながら立ち止まっていた。ややうつむき加減に。その陰には、一歳くらいだろうか、よちよち歩きの男の子が、まるで仁王立ちに立っていたのである。幾分恰幅のいい子だ。
「さあ、歩きなさい。帰るわよ…」と、その女性は男の子に言う。僕はすれ違いざまに、様子を観察しようと思い、覗き込むようにして見た。それは、一瞬のことである。
すると、その子も、僕のことを凝視していたのだ。大きな瞳が僕を追いかけて来る…。僕は、尚も足早に通り過ぎた。
そこで、背後から聞こえてきたのが、その言葉である。「あっ、パパ!」…指をさされていたのかも知れない。
それは、たどたどしいけれども、頬に空気をよく含んだような、低く膨らみのある発音だった。僕にも、男の子がいる。でも、今年でもう、十七歳だ。
その男の子のお父さんと僕とでは、多分、年齢がひと回り以上も違うだろう。
その子が見間違えたということは、そのお父さんが二十代らしからぬ老け顔(?)なのか、それとも逆に僕が…?と、歩みを進めながら、しばらく考えてしまったのである。
僕はそのとき、マレーシアの友人であるYさんから何年か振りに貰ったメールの一節を思い出していた。そこには、僕の近影を見た彼の印象が記されている。
I am impressed that you never grow old. You still look the same!
嗚呼、結局そういうことなのかも知れない、と独り、はにかんでしまうのであった…(どーもすいません)。
帰宅してから、家族にこの一件を話したら、とりわけ娘には大受けだった。真似をして、子供っぽく「パパ!」と言われた。いや、いつも「パパ」と呼ばれているのだけれども…。
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さて、トップの写真は、以前、塾のテストの問題用紙に描かれていた落書きである。
これを描いた生徒は、解答用紙だけ提出するのだと思っていたらしい。しかし、問題用紙も回収します、と聞いて驚き、謝りながら、これを僕のところに持ってきたのである。
まあ、大したことではないので、僕は勿論、これを不問にした。むしろ、この絵は何を描いたものなのか、気になったのだけれども、そのときはバタバタしていて、結局聞けずじまいであった。これは、僕なのだろうか?と、あとで思ったものである…。
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先日の2学期のスタートテストでは、試験監督と採点の同時進行だった。いつものことだけれども、流石に疲れたのである。英語のテスト採点は、案外と捗らないものなのだ。
生徒によって筆跡はまちまちで、解読に手間取ることがある。尚且つ、綴りのひとつひとつまでよく見なければならないので、気を使う。加えて、問題数が多い。点数計算の、単純な足し算の繰り返しも、頭を一層疲労させる。とにかく大変なのである。
その中で、ホッとしてしまうのが、生徒の珍解答。ときに先生同士で、「これ、面白いですよね」と、ささやかな話題となってしまうこともある(…のは内緒だ)。
僕がその夜、ひとりで採点していて面白いと感じたのは、この問題の解答だ。コッソリ教えちゃいます。(掲載にあたり、一部内容を変えてあります…)
まず、問題は、
My brother washed the car. (the carを主語にして、同じ内容の文に書き換える)
という、中学英語の文法問題である。英語使いの方々であれば、正解はすぐにお分かりであろう。これだ。
The car was washed by my brother.
受動態と呼ばれる文法規則を利用すれば良いのである。しかし、今回、僕が面白いと思った珍解答は、これ。
The cat took a bath with my brother.
うーん、まず、carをcatと読み間違えている。そのような誤読をした解答は、実は他にも幾つかあった。
しかし、上の解答の面白いところは、この生徒が想像力をふんだんに用いて、「お風呂に入った」というところまで書いてしまったことだ。しかも、この英文そのものには、文法的な間違いがない、というオマケ付きであるw
「猫を洗った」の受動態は、「猫がお風呂に入った」になるのだろーか?いやあ、面白い。でも、残念ながら、バツを付けざるを得ないのである…。
他にも、和文英訳の問題などで、「どーして、こうなっちゃうの?」という解答は多い。
英訳の間違いを減らすコツは、自分が書いた英文を、一旦自分で日本語に訳してみることだ。途中で、何だか変な日本語になるな…と感じれば、その英文は文法的に間違っていることが多いのである。
さて、本日もテスト監督だ。一応他教科なので、採点の仕事はついて来ないと思うのだけれども、油断はならない。そして、翌日は、休みの予定である。でも、朝のお仕事はあるので、いつも通り早起きなのだ…。
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先達て、ついに『ドラゴンクエストXI』をポチってしまいました。中古で出物を見つけたのです。ちなみに、『IV』は、まだ終えていない…。届いたら、息子に先にやっていて貰おうか。攻略本は、必要だろうなあ、やっぱり。
『ニンテンドー3DS版 ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて 公式ガイドブック』
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