あられがキャベツの葉っぱの上に降る小宇宙。あと、初来日中のテオドール・クルレンツィスについても…

土曜日の朝は、降雪の予報通りになったのかどうなのか、あられらしきものが降った。

ベランダに出てみると、シャーという微かな高音が聞こえる。これが、あられの降り積もる音なのだろうか。鈍色の空の下、隣家の屋根が白っぽく変わっていた。それがトップの写真。
iPad miniにマクロレンズを取り付けて、ベランダの桟を撮影。金平糖のようなイガイガとした星型や棒状の結晶になった、あられの粒つぶが写った。

先達ても書いたように、僕はうさぎのおやつのために、キャベツの葉っぱを外に出して干している。その上にも、あられが積もっていた。

キャベツの表面の太い葉脈の形や凹凸に従って、それは律儀に堆積している。あられの白さと、キャベツの黄緑色とのコントラストもまた面白いと思う…。

撮影後に一旦、葉っぱをサッと振り払うと、あられは容易く落ちて行った。水気が少ない、実にサラサラとした雪質(?)らしい。この後も、まだ降っていたようである。


そして、翌日の日曜日。この日の朝は、眩しい程に晴れ渡っていた。まるで、台風一過のようだった。雲ひとつなく、これは夕方以降の星の観察が楽しみな空模様である(…結局、夕方から曇ってしまったのだけれども)。

ベランダに出しっ放しにしてあるキャベツの葉っぱを見ると、前日のあられが水滴の形になり凍っていた。朝日の暖かさで、既にやや融けかけている。

ニコン P900の接写モードで覗くと、氷の中には実に細かい気泡が数多と見えた。まるで、星雲の中に浮かぶ小天体たちのようである。
そう、これはきっと宇宙の姿なのだ。キャベツの葉脈は差し詰め天の川といったところ。

周囲に点在する幾つもの星雲。もっと小さな粒は、孤高の恒星たち。そんな幾つかの空想が忽ちのうちに、ファインダーの向こうで展開される…。

そうこうするや、氷の粒は陽の光の眩しさだけを残し、液化して流れていった。束の間の儚い夢であった。

….
さて、ただいま来日中の天才鬼才指揮者、テオドール・クルレンツィスに関する記事をリンク。こういった、クルレンツィスの人となりに関する記事は案外と数少ないのでは。下は、そのような中で短いながらも貴重な優れた記事だと思う。


(出典:Yahoo!ニュース

この中で、僕が特に興味深く読んだのは、以下にピックアップした3点だ。

・作曲もするが、そのうち、「自分は人と違ったことをオーケストラ譜から読み取れるらしい」と気付き、指揮の道に進む。

・晩年のムーシンにはヴァレリー・ゲルギエフやユーリ・テミルカーノフなどの優秀な弟子がいたが、「クルレンツィスは唯一の天才」と特別視していたと言われている。

・彼の指揮する19世紀のイタリアオペラにビートが効いていて、ロックみたいな部分があったとインタビューで振ると、「音楽に対する愛から湧き出て来るエネルギーのなせる技。ロックはエネルギーがあるけれど、エネルギーがなくなると、クラシックになっちゃうから」と皮肉る。

上の3項目を見るだけで、テオドール・クルレンツィスが只者ではないことがよくお分り頂けるだろう、と思う。指揮の師であったムーシンが言うように、やはり「天才」なのかも知れない…と言うよりは、間違いなく「天才」なのだ。

あと、テオドール・クルレンツィスとムジカエテルナの初来日特設サイトについても。このページには何と、クルレンツィス率いるオーケストラ「ムジカエテルナ」の日本人メンバーのインタビューが掲載されているのだ。
これが、上の記事とはまた趣を異にして、ムジカエテルナの内幕というか、クルレンツィスの普段の表情が垣間見えるような内容になっていて、実に興味深い。


(出典:Facebook「クルレンツィス&ムジカエテルナ初来日公演2019」)

上のスクリーンショットは、SNSにアップされた同内容のエントリ。こちらも、幾つか興味深いところをピックアップしてみよう…。

・クルレンツィスから『知らない人の演奏って聴いてみたいんだ』という話があり、『いいよー』と軽く答えたら、それが実はオーディションでした。私、はめられたのかな?って(笑)。

・音楽のエネルギー、プレイヤーたちのエネルギーについてのこだわりもありますね。だから立って弾かせるんです。そのほうがエネルギーが出やすい。私自身はその方がいいです。自由度があるし身体がより使えるし。それに彼は、『内臓をぶちまけろ!』なんて言い方をよくします。

・黒っぽい服、ぴったりした服、そうした装いも独特ですよね。香水に凝るとか。もしかすると、それらを含めてクルレンツィスのそういう謎めいた(?)ところって、シャイがゆえの自分を隠す“鎧”なのかもしれません。そして周りがそういうところかわいいな、と思っているのに全然気づいていないのかもしれませんね。

いやあ、こちらも面白い。この田部さんという、ムジカエテルナのバイオリニストの方が楽しくお話しして下さっているお陰で、これらのエピソードがまるで目に浮かぶように、益々興味深くも感じられるのだ。是非とも、上のページで全文ご覧になってみて下さい…。

最後に、もうひとつ。上は、1年以上前にネットで拾った画像。英国の新聞の一部分らしい。その右上には、テオドール・クルレンツィスと思しきイラストと共に、「世界でいちばんロックンロールな指揮者?」と書かれている。
そうなのだ。クルレンツィスは、上でご紹介した記事にあるように、ロックな(しかも、かなりヘビーなロックの)指揮者なのである。そうでなければ、練習中に「内臓をぶちまけろ!」なんて言葉はなかなか出てこないかもw

何にせよ、テオドール・クルレンツィスは、クラシックのみならず、世界の音楽界において最も注目すべき存在のひとりであるのは間違いないのだ…。

……
下のリンクは、今回の来日公演でも演奏されている、チャイコフスキーのバイオリン協奏曲です。勿論、指揮はテオドール・クルレンツィス、管弦楽はムジカエテルナ。ソロは、こちらも鬼才の若手女性バイオリニスト、コパチンスカヤ。僕はまだ、CDを通しては未聴なのですが、先日一部分をFMラジオで聴きました。いやあ、ほんの触りだったのですが、これもやはり凄い。遅ればせながら、早急にCDを入手してじっくり聴いてみなくては…そう思わされました。

『チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲/
ストラヴィンスキー:バレエ・カンタータ「結婚」』
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