先日、仕事場の塾へ行った際、誰もいないPCの前にひとつのメガネが置いてあった。茶色の縁でレンズはごく薄い。還暦を少々過ぎた理数の先生のものであることは一見して分かった。
僕は試しに、そのメガネをかけてみた。単なる好奇心からだった。するとどうであろう。目の前のモニターの中やデスクに貼られたメモに書かれている文字が、一層くっきりと認められたのである。
メガネを外して蔓の部分を見る。「+1.0」など英数字で記号のようなものが幾つか刻まれていた。すると、その先生が戻って来られた。
「このメガネ、どこで買いましたか?JiNSか何かですか?」僕はデザインや刻印から、そんな印象があったので訊いた。すると、「いやあ、100円ショップですよー。何処にでも売ってますよ。欲しいんですか?」と仰った。
そして、「欲しいです…。これをかけると、このあたりの字がよく見えるんです。いや、かけなくても見えるんですが、あれば一層よく」と言うと、「それは、ローガンですねー」と、柔和にお笑いになった。僕も笑った。
それから次の日、ドラッグストアへ行った際、ふと100円コーナーを覗いてみると、そっくりのメガネが置いてあった。度数は+1.0から+4.0まで7種類が揃っている。+1.0以外は試装用の見本も置いてあった。
試しに+1.5をかけてみると、あのときよりもレンズの向こう側が、少しだけクラクラと歪んで感じられた。きっと、これでは度が強いのだろうと思った。+1.0の黒縁のものを買った。
そんなわけで、このメガネ、外出時のお供となった。これで、電車の中でも目を凝らさずに本を読むことが出来るようになったのだ。今まで僕は、車内の明るさ次第で多少苦労しながら読んでいたからだ。
なお、パッケージの台紙に印刷された表には、+1.0は40〜45歳が目安とある。きっと僕の目玉年齢は、そのくらいには若いのだ。そう思っておくことにしよう(笑。
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先月のことになるけれども、本棚からCDブックを一冊発掘した。オバマ大統領が当選した2008年に発刊された『オバマ演説集』という本である。あの頃は、幾つもの出版社から類書が出されて大いに売れていたようだ。オバマブームだったのである。
僕も例に漏れず、ひとつ買い求め、付属のCDを聴き、ペラペラと本文を拾い読みしたのだと思う。そして、それっきりであった…。いま思うと、何と勿体無いことかと思うのだけれども。
そして、先日これを見つけ出し、また読んで聴いてみると、これが頗る良い。オバマ氏の明瞭なバリトン発声による力あるスピーチ、意義深く啓蒙的な内容。いずれも実に素晴らしい。
そう言えば、勝谷誠彦氏が嘗て、「オバマ大統領には相当有能なスピーチライターが付いている。日本の政治家も見習うべきだ」といったことをよく述べていたのを覚えている。宜なるかなだ。
僕は早速、このオバマ演説集も日々の音読トレーニングのメニューに加えることにした。上の写真に一緒に写っているのは、ダライ・ラマ猊下の英語スピーチ集である。よく考えると、御二方ともノーベル平和賞の受賞者という点で共通している…。
それから、別の日にブックオフへ行ってみたところ、『オバマ演説集』の続編である『オバマ大統領 就任演説』という本が中古で売られていた。中古と言っても、CD部分が未開封の美品であった。これがたったの110円w
きっと、前の所有者の方もペラペラと捲って見ただけで、あとは放置だったのかも知れない。僕が引き取って有効活用してあげるのだw そんな訳で、写真のように3冊が揃ったのである…。
本文に鉛筆で書き込みを多数施し、CDの中のオバマ氏と一緒になって僕は音読する。すると、向こうにいる群衆たちの歓声と同じように「わーっ」と気分が盛り上がってくるのだ。これは実に良い教材である。何と楽しい英語学習だろうか。
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オバマ氏の数多ある演説の中から、特に圧巻のものをおひとつ。2004年の民主党党大会における基調演説です。この当時、オバマ氏は州議会の新人議員でした。そこで、この「おお神よ、これは歴史に残る演説です」と人々が感涙した演説を残したのでした。
その4年後に、オバマ氏は大統領として就任することになるのですが、2004年のこの演説が正にオバマ氏の政治家としてのターニングポイントのひとつになったと言えるでしょう。日本語字幕はありませんが、スピーチの熱をぜひ感じ取ってみて下さい…。
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こちらに貼ったリンクは、上で取り上げた『ダライ・ラマ 英語スピーチ集』です。ダライ・ラマ猊下の英語は決して流暢という程に早口でもなく複雑な文法や構文を用いたものでもありませんが、訥々としたその語りの中に、実に深淵な真理が含まれています。これが、欧米の人々もまた耳を傾けて首肯する所以なのでしょう。生音声のCD付き、本文は英日対訳(語注付き)となっています。
『ダライ・ラマ英語スピーチ集 ― Be Optimistic! 楽観主義でいこう!』
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