先達ての土日は、再び息子と一緒にお出掛けをした。行き先は、前回と同じく、僕の実家である。
用件は、日曜日に大学で開催される、入学説明会だ。大学生協主催のそれである。キャンパスツアーや新入生たちの交流会もあるそうなので、良い機会だと思い、遥々と足を運んだ。
先達ても書いたように、息子が合格した国立大学は、僕の故郷の市内にある。でも、僕自身は、この大学の構内にまだ入ったことがない。何とも、縁がなかったようなのである。
しかし、息子の合格によって、それは一変した。40年以上に渡って全く足を踏み入れたことがなかったこの大学へ、僕は説明会で遂に訪れることになったのだ。今回だけでなく、今後もこういった機会はありそうである。
さて、今回のお出掛けは、車ではなく、高速バスを利用することにした。理由は、前回の長距離運転からまだ日が浅く、僕が余り乗り気になれないのと、ふたりくらいまでであれば、高速バスの方が安上がりであることに気づいたからだ。
今回運転せずとも、次回は息子の荷物を多く運ぶ必要がある関係上、必然的に車を使わなければならなくなる。従って、今回くらいはまあ、ちょっと楽をしてみようと思ったのである。
実家に帰るために、僕が最後に高速バスを利用したのは、彼此20年以上も前だ。それ以降は、車で移動することが殆どとなったのである。そんなこともあって、今回のお出掛けは少し新鮮に感じられたのだった…。
今は、実に便利になった。昔と違って、予約はネット上で行える。支払いはクレジットカードで。あと、バスの中には、Wi-Fiが装備され、座席にはコンセントまである。iPad miniを持参すれば、退屈することはなさそうだ。
トップの写真は、新宿の高速バス乗り場。確か20数年前の記憶では、ターミナルビルの1階にあった薄暗い物陰のような場所で乗った覚えがあるのだけれども、今はこのような明るく開放的な場所になった。
この場所、実はビルの4階なのである。ビルそのものが、バス専用の大きな立体駐車場のような構造をしている。発車したバスは、緩やかなスロープを降りて地上に出るというわけだ。時代は変わったものである…。
いやあ、それにしても高速バスの移動は実に楽だ。自分で運転する手間がなくなることに加え、周囲の景色に目を遣る余裕が出来るのだ。バスが郊外へと出て行くに連れて、変化してゆく車窓の景色。
僕はYouTubeで音楽を聴きながら時折景色を眺め、あとはずっと本を読んで過ごした。息子とふたりで、実に安楽な旅だ。僕の心中には、えも言われぬ多幸感が思わず襲ったのである…。
そのときに視聴していたのは、下の動画だった。ラヴェルのピアノ協奏曲。ピアノ演奏は、難病に罹患していることを先頃発表した、アリス沙良オットである。
この日は雲の殆どない天気で、休憩場所となるSAでは富士山が望めることが期待された。前回のお出掛けでは、微妙に雲の掛かった富士山だったのだ。さて、今回はどんな風に見えるのだろう?
そのSAで、僕はクレープを、息子はたこ焼きを買って食べた。すると、上空から軽飛行機のエンジン音が聞こえて来た。高度はかなり低く、近い。僕は、首から下げていたニコン P900のレンズを向けた。
それがすぐ真上を通過して行ったのが、下の写真。軽飛行機の後ろにはロープで繋がれたグライダーが見えた。どうやら曳航中だったようである。
ズームして見ると、グライダーの前には白いロープが見て取れる。別の写真では、人が乗っていると思しき影も確認できた。
この2機は、SAを大きく周回するようにして飛んで行った。まるで僕たちに飛行をお披露目しているかのようだったのである。空を飛んでみるのもまた、面白そうだ。
このSAでの休憩時間は、約10分。クレープを食べ、軽飛行機とグライダーを眺めた後、バスに戻る前にズームで撮った富士山が下の写真である。前回よりも雲の少ない空を背景として、真っ白に冠雪した姿を撮影できたと思う。
この後、再び音楽鑑賞と読書に明け暮れながら、バスの旅は続いた。高速道路に沿うようにして連なる、数多の山々もまた眺めながら。こうした景色を楽しめるのも、自分が運転をしていないときに得られる大きな特権だ…。(次回に、つづく)
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下のリンクは、車中で読んでいた本です。実にユニークで面白い本だったので、後日改めてご紹介したいと思っています。ゲーテとカフカの間に何が…?興味の尽きない一冊です。
頭木弘樹 編訳『文庫 絶望名人カフカ×希望名人ゲーテ: 文豪の名言対決』 (草思社文庫)
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