先達ての祝日に、浦安市で開催された「東海林修フェスティバル」に関しての投稿、4回目。この項は、これで了となる(…筈である)。上中下編の全3回のつもりが、やや長くなり、(その1)~(その4)の全4回となった。ラインアップは、こちら。
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いよいよ開演である。楽団員がステージ上に揃い、指揮者の長野雄行さんが登壇した。長野さんは、特に吹奏楽の分野で活躍されている、指揮者にして作曲家である。すらっとした長身が目を惹く。トップの写真の左側の人物だ。右側は、東海林修先生。
長野さんは、オケをうまく纏め、迫力のある演奏を引き出すということにかけては一流の腕を持っておられると思う。僕は、昨年の演奏を聴いて、そのことを実感した。
一方で、今年は、昨年とやや異なる事情がある。昨年は、長野さんの手兵というべきウィンド・オーケストラが演奏した。今年は、そのときのメンバーの顔も見えるけれども、多くはネット上の募集告知を通じて応募してきた奏者たちなのである。
そのような、昨年とは異なる顔ぶれを、指揮者の長野さんがどのようにコントロールしリードするのか、僕は期待をしていたのである…。
果たせるかな、当日の演奏は、やはり素晴らしいものであった。
一曲目は、東海林修先生の代表作のひとつ『ディスコ・キッド』の1977年版である。つまり、オリジナル・バージョンだ。これは、学校で吹奏楽を体験された向きには、すっかりお馴染みの曲だろう。
僕は、音楽を生業としていた時期があったにもかかわらず、残念ながら、これまでの生涯の中で、楽団やバンドと名の付くものは一切未経験なのだ。せいぜい、音楽の授業の合奏程度までである。
実は、今回この音楽会を通じて、僕が最も強く感じたことのひとつは、「嗚呼、何か管楽器を嗜んでおけば良かったなあ」なのだ(苦笑。
演奏に携わっている皆さんは(ここには管楽器だけでなく、打楽器や鍵盤楽器やコントラバスの奏者の方たちもいらっしゃった)、実に楽しそうに、そして一生懸命に演奏をしておられる。その熱意が実に良く音に現れていると、僕は感じたのである。
だから、僕はステージ真下の最前列の座席から、視線を右に左に動かしながら、それぞれの楽団員の方たちのお顔をよく拝見しながら聴いた。音楽とは、両の耳で聴くだけではなく、時として、このように観ることもまた含まれてくるのだろう。
二曲目は、同じく『ディスコ・キッド』の2017年版である。司会者の方から、東海林先生にマイクが向けられ、このバージョンのご説明を頂いた。
それによると、最近の流行りの歌には、ユニゾンのものが多いという。それで、40周年バージョンである、この2017年版では、主題をユニゾンに変えてみた、と仰っていた。
ちなみに、ユニゾンとは、ハモりを行わずに、全員が同じ音階で歌ったり演奏したりすることである。多分、その流行りの歌とは、あのナントカ48(?)あたりのことなのだろうな、と僕は拝察した。
このユニゾンのアレンジによって、2017年版の『ディスコ・キッド』は、より主題が力強くなった、とのご説明であった。聴いてみたところ、確かにストレートの速球、という感じの曲調である。とても興味深く聴くことが出来た。
この後は、多少の舞台転換ののち、ビッグバンド形式での演奏である。曲目は、『怪獣のバラード』と『ディスコ・キッド』だ。
元々は合唱曲であった『怪獣のバラード』と、先程聴いたばかりの『ディスコ・キッド』が、全く装いを改めて、まるっきりジャズのようにして演奏されたのである。これは、実に面白かった。音楽の編曲というものの妙味である。
(「みんなで一緒に演奏しましょう」で、『ディスコ・キッド』を指揮される、東海林修先生)
さて、ここまでで前半。休憩時間が設けられた。
休憩時間中も、松本零士先生や東海林修先生にサインや写真を求めるファンの姿が絶えない。この日の観客は、大ホール全体の3分の1くらいの入りだっただろうか。僕が後ろをざっと見渡した中での感触である。
その殆どの方が、きっと何らかの形で、両先生とこうしてお目にかかったのでないか、と思う。この音楽会は、チラシもパンフレットも、楽団員の方の自作だったらしい。そのような、手作り感のある音楽会だったのである。
そのような、肩肘張らない雰囲気の中で、松本先生も東海林先生も、我々ファンと気さくに接して下さった。これは、とても有難い機会であったと思う。
後半は、いよいよ(僕にとってはお待ちかねの)『さよなら銀河鉄道999』である。昨年に続いて、序曲から終曲までの全4楽章を吹奏楽版で聴く。
今年も大変に素晴らしい演奏だった。むしろ昨年よりも少しバージョンアップした部分もあるのではないか、と思う。例えば、第4楽章の『再会』という曲の、ピアノのアルペジオのフレーズなどは、昨年よりもオリジナルに近い奏法になっていた。
また、この『999』で白眉なのは、演奏だけではない。司会の瀧口愛子さんによる、曲間のナレーションも、なのである。昨年もそうだったのだけれども、楽章の合間などに、映画のあらすじが語りで流れてくる。
その中には、メーテルの台詞も含まれているのだけれども、このときの瀧口さんの話し方がかなりメーテルにソックリなのである。『999』をよくご覧になって研究されたのだろうか、と僕は感じた。このナレーションで、曲への没入感が更に増したのだった。
そんなわけで、今年も堪能させて頂きました、『さよなら銀河鉄道999』。いやあ、素晴らしい。作曲者の東海林修先生も、指揮者の長野雄行さんも、楽団員の皆さんも、ナレーションの瀧口愛子さんも…。
この後は、アンコール曲をひとつ挟んで、楽器をお持ちになった方たちにはお待ちかねの、「みんなで一緒に『ディスコ・キッド』を演奏しましょう」の時間である。指揮は、東海林修先生ご本人が務められる。
楽器を持った聴衆が、ひとりひとりステージに上がった後、楽団員と一緒に『ディスコ・キッド』を演奏した。僕は、自分の席で手拍子参加であるw 嗚呼、やっぱり僕も何か管楽器をやっていれば良かった…。
(『ディスコ・キッド』のフィニッシュで拳をあげる、指揮の東海林修先生)
さて、この音楽会の中で、僕はひとつ心残りのことがあった。
後半、『さよなら銀河鉄道999』の演奏が始まる前に、松本零士先生と東海林修先生のおふたりが登壇してインタビューに答えるという場面があったのだ。2大巨匠の、貴重なツーショットの瞬間である。
そのとき、僕は何とデジカメを何故か何処かに遣ってしまって、おふたりの並んだ姿をとうとう撮影できなかったのである。周囲からは、カシャカシャとシャッターを切る音がしきりに聞こえてくる。
あんな最前列の、撮影に好適な位置にいながら、両先生が並んだ貴重な場面を撮ることが出来ず、大変に心残りであった。デジカメは、どういう訳か、その後で見つかった。まあ、物品の取る行動とは、所詮そんなものである…。
しかし、嬉しいことに、Facebookの「東海林修ファンクラブ」が、楽屋で撮影したであろう、両先生のツーショットを、当日の晩にアップして下さった。おふたりの間には、『さよなら銀河鉄道999』のポスターが見える。
この項を締めくくるに当たり、そのスクリーンショットをここに載せておきたいと思う。音楽会の中でのインタビューによると、おふたりは5年ぶりの再会なのだそうである…。
(出典:Facebook「東海林 修ファンクラブ」)
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いま、Amazonの中を見ていたら、何と『さよなら銀河鉄道999』の公式オーケストラスコアが売られているのを見つけてしまった…。しかも「2017改訂版」とある。最新版だ。うーん、食指が動きそうだなあ…w
東海林修 作編曲『交響詩「さよなら銀河鉄道999アンドロメダ終着駅」サウンド・トラックより抜粋 三管編成管弦楽全四楽章総譜 for conductor (2017改訂版) 』(楽譜)
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