強風の翌朝、月は霞みの中に。夜明けが、だいぶ早くなってきたのだ…

自動車の車検が近づいている。…と言っても、満了日はまだ一ヶ月以上先のことなのだけれども、今回はその前に済ませておかなければならないことが、ひとつあった。
エアバックのリコールである。車検の前に、その交換を済ませておかなければならない。リコールの案内そのものは、ずっと以前に送られて来ていたのだけれども、そのままになっていた。

当該のエアバックは無償交換だそうである。しかし、交換を行って貰うためには、自動車メーカーの販売店に出向く必要がある。交換の予約と交換それ自身と、合わせて2回行くことになろう。
僕は、この2回分の纏まった時間を捻出するのが難しい。だから、今まで交換せずにいたのである。でも、車検が通らなくなりますよ、ということだそうなので、エイヤッと意を決して、このたび交換の予約に行ったのだった。

これに限らず、どんなことでもそうなのだけれども、物的な交換は無償で行われるとして、そのために出向いたり、作業のあいだ待ったりするための時間は、補償されないものだろうか、といつも思う。
何かに時間を捧げるということは、代わりに別の何かの時間を犠牲にするということでもある。その犠牲にされた事柄については、他者に決して顧みられることはない。結局、自分だけが困惑し、また他の犠牲を払って何とかすることになる。以下その繰り返し…。

しかし、残念なことに、時間は補償が効かないのだ。例えば、2時間分を補填して貰おうとしたところで、その日だけ26時間になる訳でもなし。金銭や物品のように単純には増えないものなのである。実に、虚しいことだ。
販売店で出して貰ったコーラをストローで吸いながら、僕はガラス張りの外で風に揺れる葉桜を見遣って、そんなことを考えていた。店内では、有線放送だろうか、モーツァルトのピアノ協奏曲が陽気に鳴らされている。

入店してから十数分ほど経過して、整備士の方が現れた。作業内訳書のようなものを手に、希望の日程を訊いてくる。僕は、来週の同じ曜日をお願いした。もう一度だけ、ここに来ることになるのだ。
車検満了日が近づいているので、この販売店で車検も済ませてしまうように勧められるのか、と想定していたけれども、さにあらず。全くその話は出なかった。ひょっとしたら、8年前にここでこの車を買ったことも把握しておられなかったのかも、と思う。


上の写真は、今朝4時半頃に撮った月。月齢は約25。最近は、この時刻になると、もう手元がよく見えるくらいに薄明るい。日の出まではあと40分ほど。
漆黒のような闇夜から濃く深い青へと色彩を変えつつある南東の空。そこに陽の光を受けて月は黄色く浮かぶ。前日の強風の影響か、霞が上空に薄く残り、月は滲んだように見えた。

向かって左側から太陽は昇ることになる。その照り返しで、月は左のきわが眩しい。その部分だけ、やや露出オーバー気味になってしまう…。


さて、今晩は、午後6時半過ぎと7時過ぎの2回、ISSが日本上空を通過した。
6時半過ぎのときには、日没後まもないために、まだ空が十分に明るく、僕はマイナス一等級ほどの明るさだったISSを見つけることが出来なかった。その方角に雲が多かったせいもあったのかも…。

かたや、7時過ぎには、空がだいぶ暗くなり(それでも、まだ少し明るい)、シリウスなどは既に南西によく見えていた。しかし、雲が依然として多い。僕は、三脚とカメラを用意してISSを待った。
すると、雲間から南東の方角へ移動する光跡を見たのである。雲を出ては、また入る。僕は、その方角に向けてシャッターを切った。

3枚ほど撮った内の、いずれにもISSは写っていた。たとえ雲の中にあっても十分に写り込んでいた。上は、その中の一枚、ISSが雲から出たところ。1秒間の光跡。
この直後、左隣の雲の中へと入って行き、再び姿を現すことはなかった。今回もまた、十数秒間ほどの邂逅である。週末にまた、次の観測の機会を得ようと思っている。

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