先週のある日のことである。早朝に流れ星を見た。まだ日の出まで2時間以上も残った頃だ。
出勤のため自転車に乗る前に、ふと天頂付近を見遣ると北斗七星があった。そこに、柄杓の合の中へと一雫が上から垂れ落ちるようにして突如、北側から南へと光跡が白く刺し貫いたのだ。
それは、粛然と長い尾を伸ばし、消える前にはまるで蝋燭の灯火のように一層の輝きを膨らませた。たった1〜2秒ほどの刹那である。光芒は僕の網膜に焼き付き、暫しおおぐま座の姿と重なり合っていた。
はっと我に帰り、思い出したようにして願い事を3回唱えてから「嗚呼、もう遅かったんだ…」と独り言つ。
氷点下の冷気で硬ばった頬に苦笑いを湛え、そのまま自転車に跨がった。先を急がなければならない。頭の中では、起き掛けに聴いたベートーヴェンの交響曲第7番、舞踏の聖化がいつまでも鳴り響いていた…。
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そんなわけで、トップの画像は、星座アプリのスクリーンショットに描き込みを加えたもの。ちょうど息子が帰省して来たので、この画像を見せたところ、僕が流れ星のつもりで描いた白い線を「次元の裂け目?」と言っていたw
(『藤井 旭の天文年鑑 2020年版』P.97より)
この流星は、ふたご座流星群にしては輻射点も日にちもズレすぎているので、ちょっと不思議だった。
すると、上のように手元の天文年鑑には「12月22日、こぐま座流星群極大」と書かれていたのである。北天から飛んできたので、多分これだったのだろう。僕は極大日より一晩だけ早く目撃したというわけなのだ。
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さて、上述のように、ある朝、夜明け前に明るく煌めいて落ちる流星を見た。あれは、こぐま座流星群だったのだと思った。
その翌日の晩が極大日だったので、カメラをタイムラプスにして、午後6時過ぎから撮影を始めた。先達てのふたご座流星群のときと同じく、何処かに流れ星が写れば良いなと念じつつ…。
しかし、天頂付近の日周運動が盛大に写れども、流星の光跡は見当たらない。残念ながら今回はハズレだったようだw ちなみに、写真の右側が東で、右から左へと星が遷移していっているところである。このダイナミックな円運動をご鑑賞あれ…。
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さてさて、先週の金曜日はクリスマスだった。この日、折良く大学時代の友人Oさんから手紙が届いた。岩手県在住のOさんとは、もう彼此20数年に渡り、こうして文通のようなことを続けている。
手紙を前回もらったのは確か、半年くらい前で、新型コロナが蔓延し出しの頃であった。パンデミックの話題からカミュの小説『ペスト』についても書かれていたので、覚えている。
僕は、それから夏には返事を出さなくては、と思いつつも、仕事や英語の勉強などにかまけているうち、あっという間に12月となってしまった。すると、Oさんから、今年2通目の手紙が来たというわけである。
手紙の内容は、いつも哲学的で思索的だ。如何にも哲学科出身のこの方らしい、と言えばそうであろうか。今回は、それに一層輪を掛けたようであった。
文中に登場する人名を挙げれば、哲学者のマルクス・ガブリエル、スリランカ仏教の高僧アルボムッレ・スマナサーラ、サイエンス作家のリチャード・ドーキンスなどなど。
それらの人物から、実在や瞑想に関して及び宗教の行く末について思索を行い、これからの世界を読み解くには仏教哲学が鍵になるのではないかという論を展開している。
時あたかも、僕も数年前からスマナサーラ師やドーキンス氏の本を読んでいたところだったので、これには共鳴するところがあった。
そこから、Oさんは突然、クラシック音楽のポケットスコアへと話題を変える。こんなところも、この方らしいと言えば、らしいのだ。
例えば、ヒンデミット作曲の交響曲『画家マティス』のポケットスコアを入手して、読みながら聴いているのだと言う。偶然にも、僕も最近この曲をFMラジオで聴き、CDで聴き直していたところだったのである。
そういえば、僕は今年、テオドール・クルレンツィスの来日に合わせ、所謂ミニチュアスコアでベートーヴェンの交響曲第7番の暗譜を試みていたのであった(例えば、こちらをご参照)。結局、コロナ禍で公演は中止となり、チケットは払い戻しとなってしまったのだけれども。
旧友の手紙を読み通して、今年一年を振り返り色々と考えた。誰もが思うところの多い年であっただろう。
その中で自分は何を為すことが出来たのか、ということが今後問われて来る筈だ。僕はパッとした思いつきのようなものではあったけれども、英語の様々なトレーニングを始めて今も続けている。
僕に限らず、今年の結果は来年に何らかの形で、徐々に現れて来るのだと思う。こんな大激動の年に特に何もせずスカスカで終わった人は、来年もまた多分スカスカのままだw
あと一日ほどしか残っていないけれども、何か思索や瞑想だけでもしておくと良いかも知れない。僕の仕事は大晦日の朝まで残っている。では、もう少し頑張ろうかの…。
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今年も一年間、お読み頂きまして有難うございました。ぺこり。お陰様で先日、来訪数の累計が18万人を突破いたしました。来年もまた、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
最後にテオドール・クルレンツィスについて、もうひとつ。以前もご紹介した、この若き巨匠の最新作である、ベートーヴェンの交響曲第7番のCDですが、発売日が二転三転の上、漸く来年4月にフィックスしたようです。録音は、前作の交響曲第5番「運命」と同時期(2018年)に行われていたそうなのですが、クルレンツィスのことですから、今回もまたスタジオワークにも多大なる時間を割いたことでしょう。加えて、コロナ禍のために作業の進行が相当阻まれたのでは。
でも、来年に無事、発売の運びとなりそうで、ファンのひとりとして僕も嬉しく思います。併せて、ジャケットも下のように公開となりましたが、うぐいす色のような黄緑ですね。僕は、黒か赤かと予想していたのですが…。
さて、テオドール・クルレンツィス指揮、ムジカエテルナ演奏のベートーヴェン 交響曲第7番のCDが待ち切れないという向きにおかれては、このようなYouTube動画(実際には音声だけですが)があります。2014年の演奏なので、実際にCDに収録されるものより以前の音になりますが、謂わば予習として感触だけでも掴むことは出来るかも知れません。オフィシャルにアップされたものではないようなので、ご興味ある方は消えてしまわぬうちに…。(追記:やはり消えてしまいましたね…)
『ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調 作品92』
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