前回のつづき…。週末を利用して、実家まで遥々と各駅停車の列車旅。それから、徒歩で実家に向かった。道中は様々な景色をニコン P900で撮って歩いたのである。
トップの写真は、畑の片隅に咲いていた花たち。アヤメだろう。実に色取り取りである。就中、手前の紫の花が良いと思う。僕が畦道に立って、中腰でファインダーを覗き撮影していると、いつの間にか背後に軽トラックがいた。
奥の畑に入りたいようだった。僕が頭を下げつつ道を開けると、車の中から「すまないねえ」という声が聞こえた。クラクションを鳴らすでもなく、僕が気づくまでじっと(十数秒の間)待っていてくれたのだろう。却って申し訳ない気がしたのである…。
さて、実家に着くと、ちょっと一休み。僕はこの後、ママチャリを借りて、息子の大学のオーケストラ部の演奏会場まで行くつもりだった。ちなみに、息子はアルバイトに出ていた最中だ。
母からアイスコーヒーとコーラを貰って飲んでいると、「私の車で行けば?」と言う。そうか、車を借りれば良いのか。そんな発想はなかったw この日は既に夏のような陽気であった。自転車よりは遥かに快適に行けるだろう。
母の車は、マニュアルのリッターカーである。父も母も、免許を取得して以来ずっと、マニュアル車に拘って乗り続けている。オートマを拒否し続けているのだ。いや正確に言うと、父は最近その禁(?)を破って、遂にオートマ車に買い替えてしまったのだけれども。
僕も、ここ20年くらいは、ずっと自分の車がマニュアル車である。ちなみに、僕の弟もマニュアル車しか所有したことがない。こうして考えてみると、ほぼ完全なる「マニュアル車一家」なのであったw
そんな訳で、母から借りた、ちょっと非力な車(…馬力は僕の車の半分以下だろう)で演奏会場まで行った。途中には、息子がアルバイトに行っているファストフード店がある。帰りに立ち寄ってみるつもりだ。
開場の5分前に到着すると、ホールの駐車場には既に多数の車があった。そして、会場に入ると、何と数十人の長蛇の列。初めてこのオーケストラの演奏会に来たのだけれども、かなり人気のようだ。
僕は、会場で当日券を買うことも考えたけれども、もし遥々やって来て買えなかったらいけないので、前日にうちの近くのコンビニで前売り券を買っておいたのだ。周囲を見ると、僕のようなコンビニ発行のチケットを持っている人はいなかった。
きっと皆んな、地元の人たちなのだろう。オーケストラ部があつらえた茶色い紙のチケットを持っていた。それに加えて、客層は心なしか中高年が多い。学生などの若い人たちはあまり聴きに来ないのだろうか?とも思ったのである。
さて、開場時刻となり、入場が始まった。僕は前から数列目の、真ん中よりやや下手寄りの席を選んだ。今回の曲目は、ラフマニノフとチャイコフスキーがメイン。ピアノ協奏曲が含まれているので、鍵盤を弾く手つきが見えるように、と考えた座席の位置である。
30分後の開演時刻の前に、ロビーでは弦楽アンサンブルによる、所謂ロビコンが催されていた。こちらの曲は、モーツァルトや県歌など。僕は、このオーケストラの弦楽がとても気に入っているので、こうした機会も楽しいものである。
この大学オーケストラの演奏は、先達ての投稿でも書いたように、息子の入学式で初めて耳にした。そのときに弦楽がとても良いと感じたのである。演奏会があれば是非聴きに来ようと思っていたのだ。
果たせるかな、今回も実に素晴らしい演奏であった。学生のオケがラフマニノフを弾くなんて、ホントにエライ。シビれたよ。会場で貰ったパンフレットも、この2大巨頭が見開きでご登場。それもこれも、何もかも大満足であるw
次回の定期演奏会は11月、マーラーだそうだ。これも、期待できそうだなあ。きっと、また聴きに来よう。この地の散策と撮影、それから息子の様子見も兼ねてw
さてさて、演奏会の後には、息子のバイト先であるファストフード店へ行った。父から、何か買って来てくれ、と言われていたので、取り敢えずチーズバーガーのセットを注文。ハンバーガーだけ持ち帰るつもりである。
品物が出来上がるまでの間、奥のキッチンを覗いてみると、いたいたw 制服と帽子に身を包み、せっせとハンバーガーを作っている息子の姿が見えた。家の手伝い以外で、息子が働いているのを見るのは初めてのことである。
じっと僕が観察していると、息子は漸く僕に気づいたのか、こちらを一瞥して苦笑した。そのとき、顎がちょっと前に出る癖がある。帽子を目深に被れども、確かにそれは僕の息子なのであったw
店内でポテトとドリンクを食し、チーズバーガーをバッグに仕舞うと、再び車に乗り込み実家へと帰った。家に着くと、僕の弟が来ていた。弟は都内に住んで、そこから会社勤めをしている。この日は、翌日に控えた自転車の大会に参加するために帰省したらしい。
僕の弟は、僕と同じく(?)結構な多趣味である。僕に似て、コンピューターや自動車、自転車を弄ることを好み、音楽や映画などを愛好する等等。しかし、弟はそれらがアニメ系にやや偏っている傾向があるようだ(…その点は、僕の息子に似ているかも)。
それで、僕が買って帰ったチーズバーガーは、父と僕と弟の3人で繁々と眺めてから、均等に分け合って食べた。息子(または孫、または甥っ子)の作ったハンバーガーの味は格別だっただろう、と思う。
息子は帰りが遅くなるそうなので、夕食は親子4人で先に済ませた。その際の僕の主な話し相手は弟の方である。弟は、翌日早くに家を出て、車に積んできた自転車でレースに出るのだと言う。160kmもの距離を走るのだそうだ。
そのとき、僕は鈍行列車の中で見た、輪行の人たちの話をした。彼らは、この地まで来ず、途中の駅で降りて行ったので、弟の自転車大会とはきっと無関係なのだろう。
大きな袋に自転車を仕舞い、ピッチリとした服装をしていた。それで電車移動するくらいならば、現地までいっそ自転車で行けば良いのに、と僕は言ったのである。それは、弟もまた同様に実家まで自転車で来れば良いのに、ということを意味したつもりであった。
すると、弟は一瞬虚を衝かれた表情をして、いやいやそれはね、やっぱり疲れてしまうし危ないし…とモゴモゴと答えていた。でも、好きなもので疲れるのは本望だろうし、ときには危険であることを承知した上でそれを趣味にしているのでは?と僕は感じたのである。
まあ、そんなことは良いとしてw、息子が帰って来た。「こっちに気づいていたでしょ?」と僕が訊こうとする前に、「4時半頃に店に来ていたよね」と先に言われてしまった。それを聞いて、きっと僕の出現が嬉しかったのだろう、という気がした。
大学の勉強はちゃんと家でもやっているの?と尋ねると、月曜日から金曜日まで課題をちゃんとこなして提出しているから大丈夫、と言う。それで、週末はアルバイトをメインにしているようだ。
まあ、祖父母とは言え老人夫婦である。週末に日がな顔を付き合わせていても、面白いことが特にあるわけでもないのだろう。それならば、ちょっと働きに出ていた方が良いや、という感じなのかも知れない。その気持ちは分かるw
僕の弟も、息子と同様に国立大学の理系出身(しかも専攻まで息子と同じ)なので、息子の話を横で聞いて、「そうだよね。1年生の内はまだ暇だろうから、バイトをやれば良いよ。2年生から実習とか忙しくなるよ」等とアドバイス(?)する。
…そんなこんなで、夜は更けていった。弟は翌日の大会に備えて早く寝ると言い、さっさと就寝してしまった。息子は自分の部屋へ戻って行った。
僕も仕方がないので、この日に撮った写真を整理してSNSにアップしてから、いつもの時刻よりずっと早く寝たのである。(次回に、つづく…)
(実家の軒先で咲いていたビオラ。母が育てたものなのだろう)
……